ちょっとだけ
苦しい話かもしれない

幼い頃に抱いた冒険への
淡い感情は

今の自分には
眩し過ぎである

今の自分じゃ
何をするにも怖くて

あの頃に比べたら
ずっと臆病になった

公園の端から端へ
街のケーキ屋さんへ

どこに行ったって
付き纏う不安感

それを、

幼い頃は冒険とよんだ

いっそのこと
呪いになってくれたら

そうしたら、
ここまで苦しくない

ずっとずっと
海の底から世界を見てる

そんな不安を
感じたりしない

あなたが好きでした

この気持ちが届いたら

届いたなら、
あなたはどうする？

分からないなぁ

知らないうちに
届いたらいいのになぁ

残酷なお願いだった
「初めから」

初めから
やり直したい

人生で
後悔をした事はない

後悔すら出来ない
そんな人生だった

だから
叶うのなら

やり直したい

でも、それは
今の自分じゃない

別の誰かになった人生

分かっているよ
だから

願い事なんだろう？

奇跡なんて物
物語の中にしか存在しない

そんな事
分かっていた

現実的に生きるなら
期待する事が

罰みたいなもんだった

波打ち際
君は呼んではくれないんだ

私の名前を
救いの言葉を

波の音は
あの日と何ら変わりなかった

少し湿っぽい
シトラスの香り

ちょっぴり残念な
石鹸の匂い

どこかで生まれた
本当に僅かな差

それがどうして
ここまで大きくなったのか

分からないほど
馬鹿ではない

幼かった二人が
再会した夏は

苦しいほど
切ない匂いがした