冬になると、思い出すことがある。
小さい頃。
これくらいの季節になると、大抵は足が氷のように冷えていた。
冷たいフローリングをぺたぺたと、おてんばに駆けずり回っていたからだろうか。
単に冷え性だったからだろうか。
そんな状態で布団に入ると、同じ布団で寝ている母に「つっめた!!!」とよく言われたものだ。
けれども氷のような私の足を、母は自分の足をくっつけてあたためてくれた。
当時はあったかいなぁ、程度にしか感じていなかったが、今になったら分かる。
それがどれだけ、あたたかなことか。
ぬくもりの記憶
寒い。
昼休み、しんとした別棟の教室で、一人お弁当を食べる。やはり母の作る飯はうまい。
コートを着てはいるが、指や首の隙間から冷気が押し寄せてくる。小刻みに震えが来る。みじめだ。
全部、自分のせいなのだけども。
友達を作ることも、自分を誇ることもできない、半端者の自分のせいなのだけども。
けれど、自分の人生を楽しくするのも、つまらなくするのも、全部自分だから。
変わってみせる。
絶対こんな自分、変えてみせる。
楽しい人生に、してみせる。
そう決心して、私はハンバーグを頬張った。
あれやってこれやって、その次こうして、それが終わったらあれをそれして、同時にこれを進めて、あ、あれもやんなきゃ、
「ぶちっ」
なんか切れた音がした。
あ、やばい。これまずいやつ。
私は一度、椅子の背に身体を預けた。
そしておもむろにスマホを取り出して、プログラミングでもされていたかのように、好きな曲をタップする。
ふう、と息が漏れた。
ピアノの音が、ぱらぱらと優しい雨のように降ってくる。
スッと胸に入ってくるような、優しい歌詞。
ただ音に耳を傾ける。
いつのまにか、さっき、ぶちっと切れたやつは、繋がっていた。
「さーて、やるか。」
私は作業に戻った。
[心の深呼吸]
努力がここまで報われなかったのは、人生で初めてだった。
あんなにかけた時間はなんだったんだろう。
敗北者のあたしは、なんだか馬鹿みたいじゃないか。
泣きながら、知らない道をただ歩く。
道行く人が不思議そうに、あたしを見る。
こんな日に限って、空があまりにも綺麗なんだよな。
手放した時間
記憶のランタン。
なんて素敵な言葉だろう。
思い出が、あたたかく、明るく灯って、
心を照らしてくれている。
だから、前に進めるんだと思う。