言葉にならないものは何だと考えたとき、
美しいものを思い浮かべられる自分であれ。
あの頃の夏休み、ひたすらのめり込んでいたことがあった。
お絵かきだ。
物心ついたときから絵ばっかり描いていた私だが、あのときは全盛期だった。
オリジナルキャラクターたちをひたすら描きまくっていた。設定を考えたり、オリキャラ同士で絡ませたり、世界観を構築したりするのが何よりも楽しかった。
もはや彼らは、私のかけがえのない友達だったのだ。
イヤホンをつけて、好きな音楽をリピートしながら、ひたすら絵を描く。
そんな夏休みだった。
今でもそのとき聴いていた曲を聴くと、思い出す。絵を描くことが世界のすべてであったかのような、あの真夏の記憶を。
あの日半分冗談で語り合っていたことが、現実になってしまった。
白に近い水色をした空はどこまでも広がっていて、八月の太陽に照らされた海は絶え間なくきらめく。潮風は磯の匂いを運び、隣には同じ景色を楽しむ君がいる。
夢じゃないよね?
心の羅針盤が狂いまくっている。
私はどうしたいの?
私はどこに行きたいの?
私は何になりたいの?
ここだと決めてもすぐに方角を変える心。
人の意見で簡単に狂うような羅針盤。
どうして?羅針盤は正しい方向へと導くためにあるんでしょう?
でも他に頼れるものはない。
もう壊れたほうが楽なのかもしれない。
ただ大海に浮かんで、
どこに行くのかもわからないまま、
一人ぼっちでいれば良い。
そう言ったら、もう一人の自分が、
顔を真っ赤にして怒った。
夏休み中、ほぼ日課となっている散歩をしていると「君が隣にいたらなぁ」って思う。
水色と桃色と薄い黄色のグラデーションになっている、綺麗な夕焼けを見せたいと思う。
綺麗な青空と入道雲も見せたいと思う。
美味しそうなお店を見つけたら、君と一緒に行く妄想をしてしまう。
楽しかったことがあったら話したくなる。
逆に君が楽しかったことも聞きたい。
今日食べた美味しいものの話をしたい。
一歩も動けないときは君の写真を見返す。
今度遊びに行くときのことを妄想して、なんとか食いつなぐ。
君のリュックについているかわいいキーホルダーを思い出す。
指の感触と、笑ったときの目元を思い出す。
8月、君に会いたい。