空恋。
そらこい…?
読み方がわからないし、意味も知らない。
恥ずかしいので恋愛のネタは一旦やめておこうと思った途端にこれだ。どうやっても避けられない。
虚しくも叶わない恋のことだと言われても納得するし、空のように移り変わる恋心、と言われても納得だ。
ただ、私には恋人がいるので、ネガティブな意味には解釈しないでおこう。
どの時間帯も綺麗で、常に景色が変わる空。
恋も同じだと思う。
まだ見れていない君の表情を見せてほしい。空よりも、絶対に綺麗だろうけれど。
あれは8月のことだった。
私は親友と、海に行った。
青春ごっこをしたかったのだ。
けれども天気は全くの曇り。
そのくせ、むしむしと暑く、まったく青春とはほど遠かった。
靴下を脱いで、足まで浸かった。
海なんて久しぶりだったから、波の圧力が結構強いことに驚きながら、親友と波を蹴って遊んだ。
ぱしゃぱしゃ波と戯れたり、写真を撮ったり。
なんだか青春の真ん中にいるようで、嬉しくなって二人ではしゃいだ。
そのうち暑さにやられて逃げ帰ったけど、拾ってきた貝殻も、写真も、思い出も、すべて残っている。
もう一度海に行ったら、あのときのことを鮮明に思い出せるか、試してみよう。
波音に耳を澄ませて。
「風つよw」
「それな、進めねぇw」
そんなとりとめのない会話をする。
けれども僕らが制服を着てるうちに
吹くのは
すべて、青い風。
どこか遠くへ行きたい。
と、思うと、君も一緒に連れて行きたくなる。きっと楽しいから。
そういえば君もこの間、ちょっと遠出をしてみるのも良いかもね、なんて言っていた。
遠出。
昔の私なら遠出なんて絶対に嫌だった。遠出には「行くハードルが高い場所へのお出かけ」という意味もあると思う。
けれど、君となら行ってみたい。
正直、多少身構えてしまうというのはあるが、君と一緒に行きたいところがたくさんある。
とりあえず、今年の夏は水族館に行きたい。
クリスタル、と聞いて豪華絢爛に光り輝く宝石を思い浮かべる人はそうそういないだろう。どちらかといえば鉱物に近いそれは地味、といえば地味である。だが、くすんだ表面の合間から見える透明な中身には、クリスタルそのものの美しさが凝縮されているような気がしてならない。人間もそうであろう。全てを見せないからこそ、美しいのである。