未来への船
「私の分まで生きてよ」
「元気でな」
船に乗り込む
遠くなるみんなの姿
目がぼやける
何か言ってもみんなに声さえも届かない
泣いても何も変わらない
みんなとはお別れしなきゃいけないんだから
心でわかっていても涙が止まらない
「いやだよ…」
月日が経ち
島が見えてきた
ここに暮らそうかな
たくさんの人がいる
好きな人と結婚もできた
まだみんなと別れたことは悲しいけれど
ここにいれば少し
涙が止まる
いつしか
子供ができた
だけど
一緒にいられるのは
ほんの数年
そろそろ船に出す時期になるから…
子供が船に乗り込む
泣きながら
「お母さん!」
「お父さん!」
と言っている
でも私たちにはどうすることもできない
もう一緒にいられないんだから
私たちは今日も送り出す
子供達を
未来への船に乗せて
ささやき
風のささやきが聞こえる
「ねーえ、どこ行く?」
「大好きだよ」
なーんだ、あなたのささやきだったのね
影絵
影絵
自分の影を10秒見つめて
空を見上げる
たったそれだけのことだけど
なんだか切なくなる
空を見上げると
自分はこんなにちっぽけなんだと
気づいてしまう
空を見上げると
自分はこんなにも消えそうなんだと
涙が出てしまう
空を見上げると
自分はこんなに孤独なんだと
自分を嫌いになってしまう
未来図
未来図を思い浮かべる
私にはたくさん友達がいて
みんなから愛される
好きな人に告白されて
付き合って
結婚する
子供が3人できて
うるさいけど
毎日幸せ
100歳まで健康で
みんなは私のことが大好き
死にそうになったら
たくさんの人に囲まれて死んでいく
葬式もたくさんの人が来て
私はみんなに見守られながら
綺麗に埋葬される
そんな未来図は
到底叶えられない
私には友達はあなたしかいないし
好きな人もいないし
全然健康じゃないし
私を知っているのもあなただけ
…だからさ、私の分まで長生きしてね
私の分まで友達作ってね
私の分まで家族を作ってね
私の分まで未来図を作ってね
君と僕
君と僕
同じになれない
どんなに似せようとしても
僕たちはそっくりになれない
どんなに合わせようとしても
僕たちはぴったりにできない
どんなに分かろうとしても
僕たちは分かり合えない
どんなに思ってあげようとしても
僕たちは間違える
いつもそばにいてあげられるわけじゃない
僕は近くにいれられない
君が悲しんでいても
君が辛くても
僕は君に触れられない
幽霊と人間
同じになれない