お前が、好き。
彼奴が、好き。
好きなんだよ。どうしようもなく。自覚してるよ、好きで好きでたまらないんだ。
でも、この気持ちを届かないのはよーく知っている。
近くにいるから。嫌なくらい近くにいるから。だから余計に追い討ちをかけられているようで、どんどん辛くなっていく。
友達に相談したんだ。「この恋の終止符はどうやって打てばいいんだ」って、
したら答えは自分で決める事だって言われた。馬鹿じゃねーの、こちとらこんなにも苦労しているからお前に頼ったって言うのに。
理解力の無い奴
彼奴と、話した。胸が高鳴ったのを感じた。目が会った瞬間、胸が高く脈打って見せたんだ。ちっぽけな会話もしていないけど、嬉しかった。言葉に表せないくらい、心の中が満たされていった。
でも彼奴は全く気づきやしない。
こんな近くにいるのに
微笑みながら話しているのを見てしまった。無愛想な奴、なのにお前は微笑んでいる。お前の視界には勿論自分はいない。胸がぽっかり空いたような感覚になった、その微笑みに嫉妬する自分が怖かった
向こうから接近された。ビックリしたけど、嬉しかった。彼奴と話すと心がポカポカになるんだ。
頬に手を置かれたんだ。首に手を置かれたんだ。唇に手を当てられたんだ。顔が赤くなっていたのは気付いていた筈なのに、お前は惚けて手を離さなかった。こういうのを平気でやり遂げるのがお前なんだよな、知ってるよ
人たらしめ
気付いたんだ。もう無理だって、
絶対に叶わないんだって、叶わない恋だと。
でも、それに気付いたとしても彼奴は内側を知ろうとしない性格だから、きっとバレないはず
お前と一緒にいられればそれでいいんだ
幸せだから
例え君の隣が自分じゃ無かろうと、一緒にいられるだけで幸せなのだから。
「___、」
彼奴に起こされた。いつの間にかうたた寝していたようで、瞼をゆっくりと開ける
「大丈夫か?魘されてた、」
その一言でどれだけ舞踊って、絆されたことか
「…いつもの事だろ、大丈夫だよ」
「そうか、」
素っ気なく返される返事
この言葉にどれだけ期待したことか
「起きたならいい、俺は部屋に戻るからな」
彼が部屋に戻ってしまう。
慌てふためく思考
一緒にいれるならそれでいいんだから、後悔することは無い筈なのに
部屋の扉が閉まる
フッと力が抜けて、ベッドに倒れ込んだ。
バイバイ、初恋。
君と一緒にいる事が許されるなら、それでいいよ。
静かに、この気持ちへの別れの挨拶を告げた。
お祭り、それは愉快で、楽しいものだ。
綿飴、林檎飴、焼きそば、たこ焼き、かき氷……、、。
…おっといけない。つい食欲が……、、、。
その他にも、射的だったり、金魚掬いだったりヨーヨー釣りだったり、楽しめるものばかり…。
だが決定事項、お祭りの大半は友達と行き楽しむものであろう。そう、『友達』と楽しむもの。
「はぁぁああ………、、、。」
溜息が聞こえない程、会場は夏祭りで賑わっている。
それに対して俺、白夜凛はただ1人ですっとぼけて突っ立っているだけだ。
友達作りをしなさいとか、友達を作れだとか母さんがうるさいもんだから仕方なく来てみたらただただ虚しさが込み上げてくるだけだった。
母さん、俺は一生恨むからな。
そして結果的に目立たない隅っこでちびちび綿飴を貪り食いながら突っ立っている訳だ。
「母さん…、、マジで許さないからな…、。虚しさ込み上げてくるだけだっつーの……、。。」
完全な自業自得だろうけど、俺は母さんを一生許さないと心に誓った。一生恨むのは俺が嫌だから辞めた。前言撤回ってやつだ。
「……あ、」
突然、俺の方を見て声を上げたやつがいたようないなかったような気がする。……気にしない。
無視するように林檎飴に齧り付く。どうせあれだろ、俺だろって思って何ですかっていったら貴方じゃないですけどとか言われるパターン。俺経験済みだから一生経験したくないんだよ。
「……君、俺のクラスの子だよな…???」
今度こそ俺の事言ってるのかもしれない。俺の目の前に其奴の顔が見える。
「…せ、生徒会長……、、。」
紹介しよう、いやしたくねぇ。
此奴は月城唯斗。皆が憧れる生徒会長をやってる偉いヤツ。性格も人柄もあって、いわゆる人気者。
対して俺は陰キャの方で、関わる機会なんてこれが初めてだ。
「やっぱりそうだよな…、!!」
嬉しそうに声を上げる生徒会長を他所に、林檎飴を食べ続ける俺。
……気まずい。
「君はどうしてこんな隅っこにいるんだ??」
好奇心が見え見えな目で俺に問う。
「…そういう生徒会長こそ……、何でこんな隅っこにいるんすか…、?」
生徒会長はキラキラしてるからな、真ん中あたりで郡を切って言ってるんだろうと思ってた。
しかも浴衣姿だ。端正な顔つきだから余計拍車がかかってキラッキラだ。
「はは……、実は俺道に迷ってな…。。そのまま友達とはぐれたんだよな……、、」
「生徒会長………アンタ方向音痴だったのか…、、?」
「そうなんだよな…。いやぁ……、友達にもバラすなんて事しなかったのに…最初に白夜にバレるとは…。我ながら駄目だな…、!」
俺の苗字覚えてくれてたのか…、、。……流石生徒会長…、。。面構えが違う…
※関係ありません
「……話しかけてきて悪いけど、その……、。。道…わかるか……???」
「………道……すか……、」
把握しているんだが、何だろう。
俺が関わっていいような相手じゃないから関わる事に躊躇いを感じる。
……でも生徒会長にじっと見られたら何だか心が抉られる……、。
「……わかります…けど……、。……オオシエ、シマショウカ……、、」
「本当か…!?ありがとうな白夜!!!」
キラキラに目を輝かせて俺の両手を掴みブンブンと振り回す生徒会長。
クソ……、、負けた……。。
このキラキラオーラには誰も適わないだろう……、俺が断言する。
「…まず何処を目的地にしてます……???」
「射的だ!!」
「そ、そうですか……、」
うるせえ、声うるせえよこの人。
生徒会長に押されながらも目的地は聞き出せた。
「……では射的の道を説明するのでしっかり聞いてくださ……((」
「じゃあ行くぞ白夜!!!」
「はい??」
思わず困惑の声が出てしまった。は??何考えてんだこの人…
「俺は恥ずかしながら言われた事を直ぐに忘れてしまう性格でな……、白夜に来てもらわないと俺は迷ってしまう……。。」
「そ、うですか……、」
意外だ、完璧だと思ってた生徒会長が、今では俺の手を掴んで……、、、………つかん……で…、、???
「うぉあ!?!?勝手に手を掴むな!!!」
「悪いすまない本当にすまない!!!!」
「謝罪の声はいらねぇよ!?」
思わずタメが外れてしまった……
「はは、やっと白夜が年相応の対応をしてくれたな。」
「敬語はあまり好きじゃないんだ。だから敬語禁止な。」
「は、はい……、。」
「それも敬語だぞ白夜……、」
「わ、悪い……、、。。」
いきなりのキャラ代わりにゾッとするものがある。そして祭りで一気に距離縮まった。俺も等々陽キャデビューか???
「ともかくだ、行くぞ白夜。友と白夜との想い出の時間がすり減ってしまうからな。」
「……俺との想い出の時間……?!?!」
「ん……??そうだろ??クラスの皆全員友達だろ??」
「小学生かその基準……、!?」
「はは!!面白いな白夜は!!!」
「子ども扱いはしないでくれ生徒会長……、。。」
俺の頭を撫でる生徒会長にそう言う。
「唯斗で良いぞ…??」
「それは流石に荷が重いので辞めときます!!」
これだからこの人は……、。
キラキラオーラ溢れ出てる癖してこういう所だけ抜けてるんだよな……。
「荷……??白夜もしかしてお前何か荷物を抱えているのか?!」
「そういう事じゃないんだよ生徒会長!!!……ほら、早く行かないと友達が待ってるんだろ…、急ぐぞ………。つ、月城………。」
「……、!!……あぁ!!そうだな、白夜!!!」
祭りは相変わらず虚しくて、俺にとっては母さんを一生許さないような1日。それでも、今日は去年よりも楽しく感じたような気がする。
ドォオオオオン………、。
「花火上がったぞ生徒会長…。」
「本当だな。……綺麗だ。」
「……花火は友達と見るもんじゃないか……???」
「何言ってんだ白夜。」
「いきなり年相応な言葉遣いは辞めてくれ…、。。」
「友達は、此処にいるじゃないか。だから、俺は良いよ。」
「………、!!」
「……アーセイトカイチョー、アンナトコロニユーフォーガー……」
「そんなので騙されないぞ俺は……、!?」
「ッはは……、。」
今日は一段と楽しいな。
2人を照らすように、黄色の花火が、空高らかに上がった___