お題: 魔法の鏡,忘れもの,飛び込み
とある森の奥深くの蔦の生えた小屋に住んでいるのは、
魔女見習いのルーナ。
同じく魔女見習いの皆や、街の人からも評判の良い彼女にはちょっとした秘密があった。
それは彼女が鏡の国の住人だということだ。
時はほんの数年前に遡る─────。
「ええー?!反外世界へ行けって?嫌よ!!あそこはこわーい魔物がうじゃうじゃ居て、破落戸も多いって噂じゃない!!」
曾祖母の話にルーナは思わず叫んだ。
「私たち一族の女性は、10歳になると皆一度あちらの世界に行くのよ。大丈夫よ。ほんの数年間だけなんだから」
ルーナの曾祖母。ニリナ・フランジェルは彼女の肩に手を置き、温かい声でそう言う。
「だって......」
ルーナは寂しげに俯く。
確かに反外世界が怖いのも事実だけれど、彼女にはそれよりもっと嫌なことがあった。
向こうの世界に居る間は、こちらに戻れない。
それはつまり家族と会えないということ。
何よりも家族を大切に思っているルーナにとって、これは魔蟲の授業よりもずっとずっと嫌なことなのだ。
「何も一生こちらに戻って来れない訳じゃ無いんだし、
それに御守りもあるのよ?余程のことでも無い限り
向こうで死んでしまうなんてことはないわ」
二リナは棚から何かを大事そうに取り出し、優しくルーナの手のひらに乗せる。
「曾祖母様、これは?」
ルーナが手を開くと、綺麗な碧色をした首飾りがあった。
「御守りよ。あちらに行く子に必ず渡すものなの。
何があってもそれが貴女を守ってくれるわ」
「......」
ルーナは目線を二リナから首飾りへ移す。
「御守り......」
彼女は手元にある首飾りから不思議な力を感じていた。
これさえ有れば何でもできるような気がしていた。
ルーナはこれから、この首飾りと共に色々なことを学び、そして色々な場所を旅するのだ。
彼女たちの物語はまだ始まっていない______。