てんとう虫が空を飛び交って
神様への願いを運んでいる
神様は微笑んで
運ばれてきたひとつひとつの願いを
静かに聞き入れた
ところで君たちには願いはないのかい?
神様がてんとう虫に尋ねた
てんとう虫はしばらく考えてこう言った
メッセンジャーは願いを持たないほうが幸せなのです
神様は少しかなしげな目をして頷いた
#神様へ
星が見えない空を星空とは呼ばない
雲の上には満天の星があるけれど
言葉は見えているものにあてがわれるだけ
評価とかイメージとかいろいろな言葉が世界を覆っている
けれどそこを突き抜けた先に
ほんとうに美しいものが
きっとあたりまえのようにあるのかも
#星空の下で
オムライスの皿には
ふんわりと包まれたオムレツがのっている
一口食べるとほんのりケチャップの甘さ
「それでいい」と思える瞬間がある
もう何も足さなくても
もう何も引かなくても
このままで十分だと思える瞬間
「まだまだ」とか「もっともっと」とか
欲張りになることがある
「もういいや」とか「どうにでもなれ」とか
投げやりな気持ちになることもある
それでも
ときどきはいったん全部手放して
今だけを見つめていたい
オムライスが冷めないうちに
#それでいい
三日月と半月が交互に昇る夜空に
立っていた
欲しいものばかりが増えていって
目に映るすべてが欠けて見える
たまに一瞬すべてが満たされても
すぐにまた他の欲望で影を作ってしまう
ないものねだりが私のデフォルト
だけどそれでいい
満たされ続けたらきっとその先は
怠惰で夢を描けないわたし自身になってしまうから
#ないものねだり
ふたりぼっちの午後
ドーナツとマニキュア
心の距離は近づく
陽のあたるリビングで
コーヒーを飲みながら
ふたりは黙々と
それぞれの作業をする
彼女は指先に色を塗り
彼はドーナツをかじる
目線は合わないけれど
何かが通じ合っている
そんな時間が流れて
気づけば日は暮れて
今日も穏やかな休日が終わる
#ふたりぼっち