言葉が降りてくるのを待ってて
1年
3年
あのときはまるで祝福のようにことばが降りてきて
詩の庭にいっぱいの花が咲いた
言葉が降りてくるのを待ってて
5年
10年
あの頃は多くの人と切磋琢磨して詩を磨くのが楽しかったな
言葉が降りてくるのを待ってて
20年
30年
あの時代の詩はひと昔前のきらめきを放っている
けれど今の詩ことばと少し違う気がする
言葉が降りてくるのを待ってて
50年
100年
あの世紀の詩は今はもう通用しない
常識や美しさが異なるように
わたしはいつまで言葉が降りてくるのを待っているのだろう
私自身が変質する前に
今すぐペンを取らなければいけない
#待ってて
職員室だけがいつも暖かい学校
その温度管理に異議をとなえる人はいない
だってそこに行くとみんな忘れてしまうから
わたしたちは席替えで暖房の近くになってラッキーだねとおしゃべりをする
中庭をのぞむ教室
ここはどこかの縮図
伝えたいことなんて思いつきもしなかった
雪の月曜日
#伝えたい
わたしの2つ隣のカウンターで
おじさんが泣いていた
店員はショットグラスを置いて
あとは
近からず遠からず距離を保った
生きていくには
物語には登場しない脇役のやさしさが必要だ
#この場所で
誰だって笑って生まれてはこない
よかったと笑っているのは大人側の人間で
私ではなかった
そこからもう、わかりあえなさは始まっている
あのときの驚き
あのときの恐怖
安住の地を追われたあとの不安
生まれたときの持ち物はそれだけだった
世界中で説かれている
生きることへの正論
そこにかすかな違和感を感じるのは
あの頃の記憶が心の奥深くに残っているからかもしれない
#誰もがみんな
花束を渡されるのは
いつもどこかさみしい
おめでとうも
これからもがんばっても
それはつまり
さようならということ
ガーベラやミニひまわりの隙間に
残った人たちの安堵が見える
わたしは美しい花々を持ち帰って瓶に挿した
そして花束がただの花になって枯れるまでを
見届けた
#花束