谷間のクマ

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3/23/2025, 3:55:17 PM

《雲り》

 桜が咲くにはまだまだ早い、とある春の日の夕方。俺、齋藤春輝は双子の弟、蒼戒と共に少し遠くの百合ヶ丘の商店街に買い出しに出掛けていた。
「しっかしなー、どーにもテンション下がるよなー、こんなきれーなくもり空だと」
 そう、天気はあいにくの雲り。もうすぐ雨が降ってきそうだ。それにこんな日はどうしてもテンションが上がらないものである。
「雲りに綺麗も何もあるか。というか早くしないと雨降るぞ」
「だろーな。なんだっけ、桜曇りだっけ」
「花曇りだ。ちなみに桜が咲く頃の曇りがちな天気を指すから正確にはもう少しあとだな」
 桜が咲くにはまだまだ早いし、と蒼戒は呟く。
「あー、そうそれだそれ。つーかそんなことよりテンション下がるー」
 別に偏頭痛持ち、ってわけじゃないんだけど。なんでだろう。
「知るかそんなこと。というか俺は好きだが? 曇り空。暑くならないし」
「蒼戒がいいならいいやー」
「いいのか」
「だーってお前は好きなんでしょ?」
「まあ……。晴れは無駄に暑いから嫌いだし雨と雪は嫌いではないがなんとなく嫌だし消去法でくもりだな」
「嫌いではないがなんとなく嫌ってなんだよ」
「そのままの意味だが?」
「それはわかるけどさ、なんか矛盾してない?」
「うるさい。そもそも俺は水は好きではない」
「そーいやそうだ」
 蒼戒は訳あって池とか海とか川とか、水や水が溜まってるところが苦手なのだ。もちろん、雨や水たまりもそれに当てはまる。
「ちなみに俺は晴れが1番好き」
「だろうな。そういえば誰かがお前は晴れで俺が雨、と言っていたことがあったな」
「ああ、あったあった。あとなんだっけ、俺が太陽ならお前は月、とか」
「ああ、あったな。誰が言っていたのかは覚えていないが」
「だよなー。かなり昔の話だし。多分明里とかそのへんだと思うんだけど」
「あー、あいつか……。じゃない、もう降り出すから走るぞ」
 蒼戒が空を見上げて言う。
「えー、食材重いんだけどー!!」
 蒼戒も食材を持っているが、俺の方が圧倒的に多い。
「どうせ食べるのお前だろうが。なんとか運べ」
「鬼ー!」
「鬼だが何か?」
「ちょっと持ってよー!」
「断る」
「そんなぁ〜」
 というわけで結局俺が大量の食材を抱えたまま家まで走って帰るハメになった。
(おわり)

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2025.3.23《雲り》

3/22/2025, 12:16:16 PM

《bye bye…》

《cute》の続き書きたい!

2025.3.22 《bye bye…》

3/22/2025, 3:53:10 AM

《君と見た景色》

また後日!!

2025.3.21《君と見た景色》

3/21/2025, 10:45:57 AM

《手を繋いで》

また後日!

2025.3.20《手を繋いで》

3/19/2025, 7:44:35 AM

《大好き》

また後日!!

2025.3.18《大好き》

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