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2/28/2024, 4:49:25 PM

遠くの町へ

電車に乗るということをしたことがないのだけれど
漠然とただ遠くの町へ連れていかれる乗り物だと子どもの頃は覚えていて
これでどこまで行けますかと
駅員さんに10円玉の包みを見せた
ありったけの小遣いを部屋中ひっくり返した旅費
教えてもらった駅名がどこだったかまでは記憶にないが、あそこかあそこだろうなという検討はつく
結局自転車で走るよりも、全然、遠くまでは行けなかった
その日から電車は、遠くの町へ連れていかれる乗り物ではなくなった

2/22/2024, 3:35:41 PM

太陽のような

太陽のような人だよ。
あの人のことを話すとき、みんなそう口を揃える。
向日葵のように笑うんだ。
あの人のことを噂するとき、みんなそうほころぶ。
鶏のように溌剌としているんだ。
あの人のことを讃えるとき、みんなそう付け足して。
夢を見すぎているところはやめさせたいのだけれど。
あの人の思いを言い終えると、みんなそう眉を顰める。

私はあの人の、夜よりも暗い髪と瞳が好きだ。

2/22/2024, 1:50:31 PM

0からの

新品のノートは慎重な文字を書かないと気が済まない。
そういうのはたいてい、強い筆跡で書いてしまってやけに手が疲れるし、書く速度も遅くなるし、つやつやだった表紙の裏に凹んで残るし、小指の下のところが鉛筆で真っ黒になる。
シールがついてるノートだったらもっと悲惨で、綺麗にしたかったのに、ちょびっとの段差で文字がズレて、ああもういいやって結局いつも通りの筆跡にすぐ戻る。
きれいな字の寿命は短いんだ。
そう言うとママとパパは笑うけど、表紙に書いてくれた名前はもちろんきれいで、それはもう、1ページ目でもないところに書くのだから、緊張もとんでもないんだと思う。