出窓のポーセリン人形
麦わら帽子の少年が押す花車
花々の種類もかたちもさまざまに
小さな花びらの一枚一枚まで細やかに
なんて繊細で美しい
どんな人の手で どんな工程で作られたのか
自分もいつか
こんな美しいものを生み出せるようになれたらな
「繊細な花」
#451
「夏がきた!」と喜べる
最高気温がめったに30度を超さないような
熱中症も紫外線も集中豪雨も心配ない
そんな夏がよみがえっていてほしい
「1年後」
#450
知らないことばかり
初めてのことばかり
楽しいことばかり
どんどん歩く 追いかけると飛び立つ鳥
道端に落ちている 触るとジジジ暴れるセミ
踏めばカサカサ 風に舞い上がる枯葉
ある朝突然 真っ白な世界 冷たい冷たい肉球
今はもう 何でも知ってる
自転車の音 バイクの音 トラックもへいき
カミナリと花火はちょっと嫌だけど
いつも家族といっしょ 何も心配ない
最近仲間入りしたおチビさん
まだ何も知らないみたい
尻尾ふりふりついてくる
噛んじゃだめだよ 吠えちゃだめ
こっちにおいで いっしょに遊ぼう
楽しいことだらけだよ
「子供の頃は」
#449
防波堤に並んで座る
日傘に入れば 波音が響いて
海を見つめる ふたりきり
「相合傘」
#448
子どものころ 底なし沼に落ちた
実際には底なしではなくても
水と土の微妙な量のバランスで
泳ぐことのできない
もがくほど沈む恐ろしい泥沼になる
きれいな湧き水で知られる土地で
蝶を追っていた夏の日
池のほとりは水草が茂っていて
どこまで地面かわからないまま
踏み込んだ足がすっ、と吸い込まれた
ポチャンと水に落ちるのではない
泥の中にゆっくり沈んでいったのだ
頭は真っ白で声も出ない
蝉の声も消えた静寂の中で
身じろぎもできぬまま膝、腰、胸と
もう目を閉じるしかないような瞬間
対岸から駆けつけた父が引き上げてくれた
全身小さな浮草と泥まみれ
蝉の声が戻ってきても放心していたっけ
慣れぬ土地の池や沼、
どうか皆さまお気をつけて
「落下」
#447