雪山にすむという架空の鳥 寒苦鳥
極寒の夜には震え苦しむのに
翌る日の暖かさについ巣作りを忘れ
夜がくるたび後悔し続けるという
人の怠惰、
愚かさや悲しみを言うのだろうけれど
繰り返し後悔してもいい、と思えるほど
昼の暖かさ心地よさが喜びの極致なら
それはそれで良い気がしてしまう
「後悔」
#421
初夏を吹き抜ける風
若葉のかおりをのせて薫風
青葉のいろを映して緑風
両手をひろげ
胸いっぱいに風を吸いこむ
身も心も澄み渡って
この季節が この時が
ずっと続くといい
「風に身をまかせ」
#420
ここに何かを書こうとするとき
その素材の多くは
過ぎ去ったわたしの生涯の
すでに失われた時間のなかにある
お題をきっかけに
自分のなかの未整理の
夥しい記憶 感覚 におい 手触り
思いがけないそのひとつに辿りつく
ひとつ整理をしては
すっと心が浄化されるような
そんな心地よい感覚
(プルースト効果ならぬお題効果と思っている)
「失われた時間」
#419
子どもをはじめてあずける時
泣きべそ顔のわが子とおなじに
きっとわたしも不安げだった
その時ひとりの保育士さんが
黙ってわたしを抱きしめて
背中を優しくさすってくれた
驚く間もなく巨大な安心感に包まれ
自分が幼子になって護られている気分
子どもが泣いたら同じようにするからと
言葉のいらないハグのチカラ
あなたは大切な存在だと
安心して身を任せていいのだと
いくつになっても誰だって
幼い自分がひそんでる
こころの奥のやわらかな記憶
「子供のままで」
#418
高層階のベランダで
大きな声で鳴くカラス
二羽で追いかけっこしたかと思うと
急上昇や急降下 派手に羽をはためかす
いまはちょうど求愛の季節
光るものや食べものを贈ったりもするという
力強い飛翔能力を見せ
声を響かせ遠くへ叫ぶ
見てると確かにカッコいいかも
応援しちゃう がんばれカラス
「愛を叫ぶ。」
#417