マンションの管理人さんは
少し強面のおじさん

愛想が無くて口も荒い
ちょっと敬遠されがちだけど

子どもたちには優しく陽気
よくみんなに取り巻かれてる

バレンタインの日
幼稚園児たちが思い思いの贈り物をした

紅潮した頬で強面もどこへやら
照れ臭そうにボソッと「ありがとう」

「喜んでたね」「赤くなってたよ」
子どもたちも嬉しそう

ホワイトデーにはお返しだと言って
駄菓子を配ってくれた

その後程なくして病に倒れたと聞き
復帰を待っても戻ることなく

あれから10年以上
大きくなった子どもたちと

バレンタインデーのたびに
なつかしく思い出す




「バレンタイン」

#332

待っててね、って言わないで

まるで宇宙にひとりきり

一緒に行くよ、置いてかないで




「待ってて」

#331

あきらめないで
あきらめないで

足掻いて　
しがみついて

つかんだ岩が
手の中で崩れても

見上げる先が
闇に包まれていても

あと少し
その手を伸ばして



「伝えたい」

#330

会えますように　会えますように
祈ったわたしに奇跡をくれた

大きな椎の木　太いしめ縄
通るたびに　ありがとう



「この場所で」

#329

　誰もが心にもっていて

　冬の晴れた日　遠い空から射してくる

　光がみつける　小さな寂しさ

　


「誰もがみんな」

#328