tifon

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6/27/2023, 10:31:57 AM


ここではないどこかの崖の上で
わたしは長い髪を風に揺らせている

ここではないどこかの草原で
わたしは馬を疾駆させている

ここではないどこかのわたしは
森の奥深くの小さな赤いきのこであったり
海の底の目の退化した魚であったり
宇宙の遠くのヒト型ではない生命体だったり

そんなことを考えていると
だんだん意識が拡散していって
ここのわたしも粒子になって広がって

ここにいるわたしと
ここではないどこかの全てのものたちは
実はみんな同じひとつかもしれないと
思いはじめる

自分とそれ以外って
どう区切られるものだったろう



「ここではないどこか」

#148

6/26/2023, 10:52:36 AM



あなたと最後に会った時
それが最後だなんて思わなかった

今日はありがとう、またね

互いにそう言って
またの日があると疑わないで

会者定離 一期一会
サヨナラだけが人生だ

言葉をいくら知っていても
この悲しみは 無念は
何度も味わうものなのか

無常の風は
くるくると回りながら
何度も吹きつけてくる



「君と最後に会った日」

#147

6/25/2023, 11:43:01 AM


繊細な花だと言われるのは心外

感じやすく 傷つきやすいのは
本来いるべき場所にいないから

わずかな変化 わずかな刺激にも
たちまち弱ってしまう

自分らしくいられなくて
少しずつ 何かしら無理をしながら

わたしに合う場所にいられたら
傷つくことなんか恐れず
ずっとのびのびタフになる

花とすら認識されないくらいに



「繊細な花」

#146

6/24/2023, 10:35:00 AM


「こちらが1時間煮込んだものです」

 そんなかんじで

「こちらが必死に過ごした1年後の姿です」

「様々な経験が染みて、
  穏やかに熟成してますね」

 だといいけど

(「あの人はいま」ってそういう企画か、、
    他人の時間は早送りできるんだな)




「1年後」

#145

6/23/2023, 11:55:35 AM


子ども時代は
腹ぺこで迎える
初めてのフルコース・序盤

テーブルに案内されて
椅子に腰掛けるだけでわくわく
グラスに注がれた水もきらめき
ああ 美味しい

メニューを示され夢が膨らむ
あれもこれも全部食べたい
全部食べられるんじゃないかな
だってこんなに腹ぺこ

こんな材料をつかって
あんな盛り付けをして
どれも目新しくて魅力的
なんて美味しいんだろ

メインをしっかり味わう頃には
お腹もしっかり落ち着いて
あれ 
いつの間にか大人になってた

もうこれ以上は食べられない
あとは甘いものを少しだけ
選んだ魚は間違いなかった
肉もちょっと試したかったな

ああ 美味しかった 楽しかった
また腹ぺこからやり直したいけど
苦いコーヒーで締めくくろう



「子供の頃は」

#144

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