小っちゃな頃は
毎日泣かされてた
でも 構ってほしくて
邪魔ばかりしてたのはわたし
6つ年上のお兄ちゃんは
わたしにとっては大人で
何でも知ってて何でもできる
自慢のスーパーマン
父が亡くなり母が亡くなっても
お兄ちゃんがいてくれた
わたしももう充分大人なのに
心はいつも頼りにしてた
そこにいてくれるだけで
突然失って 今になって
わたしは何をしてあげられていたろう
ゆったりと にこにこしている姿に
いつも甘えて いつも頼って
あたりまえのように
わたしは ありがとうって言えていたのかな
思い出せないよ
お父さんお母さんには会えたかな
もう一度 構ってほしくて涙が出る
小さな頃のように
「ありがとう」
#94
君のその目は
「優しくしないで」と言ってるの?
そんなの無理だよ
「ひとりにさせて」
そんなこと思ってないよね
「あなた無しでも生きていかないと」
悲しいこと言わないでよ
いつだって優しくしたいよ
ほら、一緒に散歩に行こう
オヤツもあるよ
尻尾を振ってる 嬉しいかい
留守番なんてさせないよ
最期まで一緒に暮らすんだ
世界一幸せな犬でいてほしい
「優しくしないで」
#93
日々 その時々の気分で
心の色が変わる
見える世界の色が変わる
舞台の照明が切り替わるように
めがねのレンズを変えるように
移り変わっていくその色を
ちぎり絵にしたり
刺繍にしたり
ビーズにして繋げたりしてみたい
人生を織りなす作品に
ひとりひとりの物語
なんてカラフル
「カラフル」
#93
椰子の葉を揺らす風
白い砂浜に寄せる波
青い青い海 水平線
色鮮やかな花々 鳥や蝶
パラダイスアイランド
桟橋にひしめく豪華なクルーザー
巨大なリゾートホテルでは
世界からの旅行客が笑いさんざめく
でも
気づいてしまった
この島のすぐ裏手には
スラムで生活する人々
貧困と暴力 犯罪
苦しみが対になっている
そんな楽園が
欲しいんじゃないんだ
「楽園」
#92
風に乗って やってくる
花粉に黄砂
遠くのサイレン
子どもの遊ぶ声
お出しの香り 焼き魚
きんぴらごぼう 生姜焼き
沈丁花に それからジャスミン
少し湿って雨のにおい
運ばれてくる暗い雲
いそげいそげ
おうちに帰ろ
「風に乗って」
#91