力を込めて 拳を握る
力を込めて 地に立つ
力を込めて 頬をつねった
痛い。
力を込めて唇を噛んで
更に全身に力を込めたけれど
微かな震えと 微かに漏れる嗚咽は止まってはくれなかった
まだ、生きてる。
「力を込めて」
過ぎた日の事を思い返しても仕方ない。
今更何を思ったって、何も変わらない。変えられない。
ああ、ほら見ろ。また涙が止まんなくなるだろ。
だけど今日もまたこうやって、ふとした瞬間思い出す。
こんなに時間がたったってのに、まるで昨日の事みたいに鮮明に。
本当お前は俺を困らせるのが好きだよな。
なあ、俺は正しかったんだろうか。本当にこれで良かったのか?
宝物だったはずの日々は、こんなにも苦い記憶に変わってしまった。
いつかそれも「思い出」と呼べるくらい、美しさを取り戻す日が来るんだろうか。
口の中にしょっぱい涙の味と、苦くて不味い不快な味が広がって、おまけにちょっと息苦しい。
久々に淹れてみたコーヒーも、何だか味がよく分からなかった。
「過ぎた日を想う」
星座
中学二年生の夏、学校の毎年の恒例行事としてキャンプに行った。所謂、林間学校というやつだ。
二泊三日、暑いし、シャワーも浴びれないし、飯盒炊爨の火起こしなんて、それはもう大変で。
キャンプのメインイベントである登山も、ただでさえきついのに、熊が出てコース変更。大回り。
どこを歩いても虫しかいないし、寝袋での寝心地も最悪。
本当、もう二度と行きたくないほどハードだった。
だけど………
唯一、胸に焼き付いて離れないもの… 今でも私を魅了し続ける、あの日見た光景。
一面に広がる満天の星空。
川のせせらぎと、微かな虫の声を聞きながら、いつまでも空を見上げていた。
時々、視界にちらつく蛍のまばゆい光を、星と見間違えたりしたっけ。
夜空の中に、小学校で習った夏の大三角だとか、おおぐま座の北斗七星だとかを見つけようと必死に目を凝らしたけれど
あまりに星が多すぎて、星座なんて一つも分からなかった。