こころとこころ
「知る、知ろうとする、というのが大切だと思います」
「……それが俺の護衛とどう関係あんの」
「どう足掻いても私は四六時中貴方のそばにいますわ。それこそお手洗いと就寝時以外」
「それで?」
「赤の他人がずっとそばにいる、というのは精神的にかなり負担があるのですわ。なので多少は打ち解けられればと」
「は。親しくねぇ奴の護衛は嫌って事かよ、お嬢様」
「私はお仕事であればどんな方の護衛も務めますけれど」
「ならなんでもいいだろ、よろしくな」
「うーむ、難攻不落ですわね……」
まだそんなに親しくないころ
この後おばけフルコンボでお嬢に助けられて
もしやグルでは…?と疑ったり疑いを晴らしたりで親しく?なる
なんでもないふり
枠だけ失礼します!
なかま
「なぁ蛸嶋くん推しとかいる?この中で」
「いたらつるむ位の関係性でそれ聞くんかい挑戦者か…?」
「お嬢推すと石蕗さんのちょっとこわい目線がもらえるよ」
「ファンサとかやあらへんぞそれは」
「いーからいーから、ほらこないだ撮った集合写真あるから」
「なんやねんこの微妙に易いノリ…」
「俺とお嬢と五月くんとたまたま出会ったユー○ューバー」
「そいつこの間迷惑系で通報されてたやつやん」
「まじか…」
「あとお前なんか連れてきたやろ肩が重いねん」
「実は古本市で買った本が」
「……本が?」
「ちょっとお嬢に言いづらい本だったからここに隠させて」
「石蕗さんとかに言えや!!!!」
「だって恥ずかしくて!!石蕗さんからお嬢に伝わりそうじゃんやだ!!!」
「受け止めぇや!!諦めろや!!」
「同じ男でしょわかってよ!!」
「うるせーー自分の命と気まずさ天秤にかけたら命を取れや!!!」
「思春期のプライドは繊細なんですーー!!」
その日のうちにお焚き上げした。
手を繋いで
普段頼もしくてなんでもやってのける手は、こうしてみると細くて小さい。
枠だけ失礼します!
さかさま
「……お嬢、何それ」
「おまじないですわ」
「箒を逆さにして雑巾をかけるのが…?」
「今『お客様』がいらっしゃっているのですけれど。なかなかおかえりいただけなくてですね、困っているのです」
「はぁ…?いえば?帰れって」
「できるならそうしています」
「笹本さんや石蕗さんは?対応してくれねぇの?」
「石蕗は所用で外出、笹本はアレルギーで近寄れません…」
「……なるほど?」
「談話室にいらっしゃいますわ。尾上君はあのお客様、対応できます?できたら穏やかに退出いただきたいのですわよ」
「りょ〜かい〜」
「あと遠目にしか確認できてないので断言できませんが首輪が見えましたので迷子かと。笹本に聞けば確実ですが、3丁目の駒田さん宅の子かもしれません」
「ん」
談話室、奥の一等陽当たりがよく柔らかなクッションの上で、『お客様』は気持ちよさそうに伸びをしている。
遠目に確認したと言っていた首輪は綺麗な赤、迷子札には話の通りの住所と名前。ずいぶん人慣れした様子で、俺が近づいても逃げる気配がない。体を覆う体毛はつやつやしている。完全室内飼いぼいな。とりあえずだっこさせて貰う。
おお、治り方がうまい。だっこされプロ猫様。
「お客様、確保〜」
「尾上君…お見事…」
「で、何丁目の何さん?届けりゃいいのか」
「先ほどお電話したのでもうそろそろいらっしゃるかと…」
「……飼い主さんここまで連れてくればよかったんじゃねぇの」
「一般の方は1人じゃここまで来れませんし、その間お客様が無事な保証もありません。ので来れて玄関までですわね」
「その言い方だとなんかあんのこの家仕掛け的な…人は入れないけど猫は入れるみたいな…」
「尾上君は聞かない方が平和なやつです」
「……つまり聞くと実害がでるやつ…?」
「聞くことで知らなかった頃には戻れなくなるタイプですわね」
「よし聞かない知らない知りたくない」
「お利口ですね尾上君、猫さんもお利口ですね…」
「……だっこする?めちゃ慣れてるしいけると思うぜ」
「怖いので結構です」
「苦手?」
「まぁ」
「嫌い?」
「いいえ」
「抱っこする?」
「怖いので結構です」
「……わからん!」
「はは、世の中色々な感性があるのですよ」
「そういうもんかねぇ…」
それこそ逆立ちしたってわからない。
ごじつかひつ