使われなくなった第2音楽室から
たった1人の
君の澄んだ歌声が聴こえる。
「声が聞こえる」
枯葉にまぎれて
消えてしまいそうなのに
それがひたすら美しく
感動と冷たい風がうなじを掠める。
好きです。も
大好きです。も
愛してるよ。も
がさりがさりと枯葉を踏む音で掻き消されてしまう。
それがひたすら美しく
ツンとした空気が手を包む。
「秋恋」
その凛とした瞳も
何を考えているか分からないが
我らのことを思ってくださっている事だけは伝わる
その頭の中も
その我ら指示する手も
戦場を駆けるその足も
全部全部大事にしたい
我らの殿。
あのお方ならきっと
お国を治めてくださるだろう。
そう語り合っては
大事にしたいと改めて思う。
だかきっと、
その大事にしたいという気持ちは
お国の為だけではなく、
あのお方に着いてゆけば
私は安心だという
自分の為にでも、あるのだろうな。
そんな、事を思いながら
我らは勝利を祝い歌いそして舞い、
酒を煽った。
「大事にしたい」
あぁ
あぁ
もう間に合わない。
弾丸が彼の胸を貫くまで
あと少し。
止まれ
止まれ
時間よ止まれ
_____ゴウン
何か違和感を感じて
視線を上げる。
そこには緊迫した表情の彼と
黄金に輝く弾丸。
私の体は動かない。
彼の心臓が貫かれる直前を
ずっと見つめ続けなければいけないなんて。
そんなの、辛すぎる。
_____ゴウン
バシュッ
あぁ
あぁ
彼が撃たれてる。
彼の胸からルビーが飛び出した。
「時間よ止まれ」
貴方と一緒に見た、オレンジや黄色に輝く夜景。
夜景とはいえやけにぼやっとしてるなと思っていたの。
でも今になって分かったわ。
あの時きっと私、泣いてたの。
美しい景色が、貴方と一緒に見れることでもっと輝いているように見えたんだと思うわ。
こっちではもう一緒に夜景は見られないけれど、
もう少ししたら私も天国へ行くから。
そうしたら世界中の夜景を空の上から一緒に眺めましょうね。
「夜景」