世界に一つだけ
何も無い。
趣味も、特技も、特徴も。
だから「友達」は多いけど、「よくいる友達」はほぼいない。
そんな自分に一つだけ。
たった一つでも眩さがあった。
一緒に帰り、一緒に話し、愚痴を言い合った。
互いの恋愛相談にも乗ったし、2人で悔いたりもした。
よくいる友達、仲のいい友達として良好な関係を築いていた。
長期休み、学校に行くことはあれど、
会うことがなくなり話す話題もなくなった。
連絡も辞めてしまった。
そこから休みが開けても話すことは無かった。
本当に何も無い。もう、何も───。
自分の味方は、自分の世界に一つだけ。
何も無いことを知っている自分だけだった。
胸の鼓動
私と貴方のリズムが混ざって
私と貴方でメロディーを乗せて
ずっと一緒に奏でよう
どんな音楽ができるだろうね
踊るように
貴女の言葉が心に響く
私はそれを歓迎する
共に照明を浴び
ステージで踊るように
貝殻
幼い頃、よく一緒にいた男の子に小さい貝殻を貰った。
「綺麗でしょ?良かったらあげるよ。まだ持ってるから」
そう言って、優しく包んだ貝殻を差し出す。
私が受け取ると、友達に呼ばれ走り去ってしまった。
渡す時の優しさと駆け出した笑顔に、私はすっかり心酔していた。
彼と話したかったし仲良くなりたかったけれど、上手く話せず苦手意識を持たれたり、ついうっかり気持ちを漏らしてしまうのが怖くて何も出来なかった。
そんな私に、告白する勇気なんか持てなかった。
彼は海での急な水難事故によって死んでしまって、私は悲しさが通り越して泣けずに唖然としていて、何も出来なくなっていた。
生きている間に何も出来なかったことは、月日がたった今も後悔しているし、これからもずっと引き摺って私を呪うのだろう。
行き場の失くした私の呪いは私の恋を吸収し、私を締め付けていた。
唯一、私と彼を繋いでくれた貝殻を、両手で優しく包み込んで胸に当てて、彼を思い出してはまた呪われて、それでも手放すことは出来なかった。
そんな時、私の気持ちを知っている親友から風鈴を貰った。
「風鈴の音が鳴るところ?舌?って言うんだけど、そこ壊しちゃったからあげるよ。貝殻をつけてみたらどう?」
言われた通りに私は、貝殻に穴を開け糸を通して繋げた。
風に吹かれて綺麗な音色を奏でて、彼の明るい笑顔を思い出した。
周りを自然と笑顔にするような、無邪気で優しいその輝きに、私は恋をしていたことを改めて思い知らされた。
そんなことを思い出させる、優しく癒すような音を出す煌びやかなガラス細工に、私の心は幾分か救われた。
彼が、前の向き方を教えてくれているような気がした。
きらめき
暖かい 落ち着くような
輝かしい 湧き上がるような
悔しさを 噛み締めるような
寂しさを 慰めるような
ぎらぎらと 肌を刺すような
惹かれる 目が離せないような
寒さを 忘れさせるような
静寂を 照らすような
そんな
僕を殺す きらめき