「バイバイ」
……祖父と最後に会ったのはいつだっただろうか。
正直に言ってしまうと私は祖父が好きではなかった。大きい声で話さないと聞こえないから対応するのがめんどくさかったのだった。
実家に来ては、ずっとスクリーンを下にスワイプして面白くもないサイトを家に帰るまでの暇つぶしとして見ていた。
「バイバイ」……これが最後の会話だった。
あんなにめんどくさかったと思っていたのに本当に「バイバイ」されると泣いてしまう。
冷たくあしらってしまった後悔はずっと心の中で住み着いている。
……もっと話すべきだったな。……今更遅いけども
「旅の途中」
私は学生である。だから人生という旅の途中ともいえない最序盤にいるのだ。
この旅の間に気軽に話せる友達も出来て、ネットでも友達が出来て、好きなものを見つけて……
まだ学生だというのにこんなにも宝物を見つけている。
この旅の終点に辿り着く頃にはこの宝物がどれくらい残っているのだろうか。
私はこの宝物達を抱きしめて砂嵐を歩いているのだから。
いつかこの長い砂嵐は去っていくだろう。その日まで頑張れ、私。
「まだ知らない君」
そういえば、私は友達の裏の顔や本心を知っているのに、私はそういうのを友達に言った事はない。
……だって、言ってしまえば君は引いてしまうだろうから。
だって、貴方は本当の「優しさ」で行動しているのに私は「偽善」で行動しているのだから。嫉妬が沢山渦巻いている私の心の中を暴かれては困るのだ。
どす黒い感情が渦巻いているって言ってしまえば君は多分離れてしまう。
私の裏の事をまだ知らないであろう君(友達)へ、ずっとこのままでいて欲しいな。私の気持ちを知らないでいてね。
「日陰」
____これは夏の話である。
太陽に睨まれながらも部活から帰る時、ちょうど陰になっていたのでそこで少し立ち止まろうとした。
「あぁ……陰だ……寒っ」
不思議な事に陰に入ると今度は風が邪魔をしてきて寒いと思ってしまうのだ。
仕方なく陰から抜け出して、太陽の睨みと陰の誘惑に負けないように必死に家に帰ったのだった。
「帽子かぶって」
オシャレに全く興味が無い私が唯一欲しがったのは、猫耳のニット帽であった。
理由を聞かれれば私は「二次元でよく見るから」と即答をする気でいる。
友達と遊びに行く予定があったので早速ニット帽をかぶって会いに行った。
____帰りに私は「めっちゃこの帽子可愛いね! またかぶってきてよ!」と友達に言われた。
この時、私は人がオシャレをする理由がやっと分かった気がした。