「日陰」
____これは夏の話である。
太陽に睨まれながらも部活から帰る時、ちょうど陰になっていたのでそこで少し立ち止まろうとした。
「あぁ……陰だ……寒っ」
不思議な事に陰に入ると今度は風が邪魔をしてきて寒いと思ってしまうのだ。
仕方なく陰から抜け出して、太陽の睨みと陰の誘惑に負けないように必死に家に帰ったのだった。
「帽子かぶって」
オシャレに全く興味が無い私が唯一欲しがったのは、猫耳のニット帽であった。
理由を聞かれれば私は「二次元でよく見るから」と即答をする気でいる。
友達と遊びに行く予定があったので早速ニット帽をかぶって会いに行った。
____帰りに私は「めっちゃこの帽子可愛いね! またかぶってきてよ!」と友達に言われた。
この時、私は人がオシャレをする理由がやっと分かった気がした。
「小さな勇気」
私の友達にクラスメイトにも声を掛けるのが苦手な子がいた。
とある日、「またね〜」と自分の席に座ろうとした。が、イスの近くで別の子達が楽しそうに喋っていて邪魔になっていたのだ。
声を掛けようとしていたが、気まずくてこちらへと戻ってきたのだった。
「……大丈夫?」と、私が一言。「無理、気まずい……」と即答された。
いや、逆になんで私と友達になれてるんだ……と本音は胸の中に入れたまま、私は言ってみたら? と促す。
「……うん、頑張るね」トコトコと自分の席に向かうと友達はその集まりに声をかけて、無事に座る事が出来たのだ!
あぁ〜、良かった〜! と我が子を見守っていた母親のような気分になっていた。
……いや、友達になんて感情を抱いてるんだよ……と、すぐに思考を切り替えたのだった。
「わぁ!」
と、私の後ろから驚かしてくる友達。「どう? びっくりした?」と聞かれても私は「全然?」と返した。
……いや、心の奥底では驚いていたのかもしれない。驚いていたけどなんだか悔しくて咄嗟に誤魔化したのかもしれない。
本当に驚いていないくても、驚いていても、「驚いてないよ」とすぐに言える私は大人になったのだろうか。
大人になった、それは嬉しいと言えば微妙である。大人になるということは落ち着いて、感情を出さないようになるという事だ。
それを裏返せば、感情を抑さえて嘘を言っているとも解釈できる。大人になる、という事は私自身の感情を伝えない、伝えられなくなるのだろうか。
……と、これが最近の思った事である。
「終わらない物語」
私はゲームを最後まで終わらせずに放置する癖がある。
ボスが強すぎてレベル上げを諦めて魔王の前で止まってしまったゲーム、序盤でもうやらなくなってしまったゲーム、キャラクター達がいつか私が帰ってくるのを健気に待っているゲームも……
今までずっと止まっていたそのゲームの世界を今日、終わらせに行こう。そして、止まっていた世界を平和にしてあげるんだ。
長年放置されていたゲームに手を付け、「終わらない物語」を「終わる物語」に変えにいくことにしたのだった。