おまえがあたしに向けているのが
恋。
あたしがあなたに向けているのは
愛。
おまえ程度のアタマじゃ
恋と愛の違いなんてわからないか。
堕ちるのが恋。
育むのが愛。
嵌まるのが恋。
導くのが愛
傷つくのが恋。
ムチを与えるのが愛。
何も見えなくなるのが恋
火をともすのが愛
いつか薄れていくのが恋。
強くなっていくのが愛。
今のおまえの気持ちも
すぐに冷えてあたしから離れていくんでしょ。
でもあたしはおまえが欲しがるかぎり
いつでも愛を注いであげる。
今日も
「目隠し・蝋燭・聖水あり・充実の6時間コース」で。
2123年12月24日
今年もクリスマスイブがやってきた。
きっと今夜もすごいんだろうな。
なぜってクリスマスイブは上級国民の思念に自由にアクセスすることが許されてる日だから。
上級国民が最高級デパートやレストランでプレゼントを買ったり、食事をして楽しんでいる時の思念を、全て自分の思念として受け取れるってこと。
政府AIはあたしたちみたいなベイシックインカムだけで生きてる最下級国民に、その思念の刺激で人生に前向きな努力をするというモチベーションをあげさせたいみたい。
AIってバカね。
思念へのアクセスが増える時間帯は、もちろん夜から朝にかけて。
だって、心と体は一体だから思念を受け取れるってことは、体もまた同じように反応できるってこと。
わかるでしょ?
クリスマスの夜は世界中が上級だけでなく、そのおこぼれをもらって下級国民も快楽におぼれる日になったわけ。
最下級国民が考えることなんてそんなもんよね。
政府AIさん、ごめんね。
22時。
あたしは同じ24才で同じ名前のエマの思念にアクセスした。
温かいシャワーが全身を流れる感覚に包まれる。
すでにホテルの中だった。
エマの鼓動が高鳴っているのを感じる。
徐々にあたしとエマの思念がひとつにとけていく。
本気の恋だ。
タケシへの熱い思いがあたしの中に押し寄せてくる。
ベッドに入る。
エマのすべてがタケシにさらされる。
恥ずかしくて、でも、うれしい。
タケシが優しくエマ(あたし)を包みこむ。
クライマックス。
タケシがあたしの中に入ってくる。
快感が、突き上げて、くる。
直後、あたしは気を失った。
目が覚めたときには自動ログアウトしていた。
うーん、刺激強すぎて気を失うとは。
こうして24才、彼氏いない歴=年齢のニート女のイブは終わった。
あ~あ、なんかあたしも本気の恋とかしたくなっちゃったなぁ。
あれ?これって政府AIの、思うつぼ、なんじゃ。。
今日も6人の男をくわえた。
計15万。
メタボおやじと腕を組みながらバリアンから出る。
駅に向かって歩いてるとユイトが見知らぬ女とパシャから出てくるのが見えた。
「ああ、ユイト、またあたしに隠れておイタしたのね。」
クソ客と笑顔でサヨナラして事務所に向かう。
お金を受け取ると今日で退店すると言って店を出た。
スタッフさん、絶句してたな。ふふ。
いつもはそのままユイトとのデートに向かうけど、うん、まずはドンキで買い物だな。
ビルの地下にあるお店につながるうす暗い階段。
10センチヒールを響かせながら考える。
今夜のデートは盛大にいこう。
ピンドンでシャンパンタワー。
ユイト喜んでくれるかな。
えっと、こういうのなんて言うんだっけ。
何とかの…おみやげ、ん?何とかのみやげ?
忘れちゃった。
まいっか。
あたしはズッシリとしたドンキの袋を持って
ピンク色に照らされたお店のドアを、開く。
ショクダイオオコンニャクだって
きっと思ってるよ。
花のうえにつく言葉って
「うつくしい」とか
「きれい」とかだよね。
ふつう。
なんであたしにつく言葉は
「世界一みにくい」とか
「世界一おおきい」なの。
おかしくない?
あたしも花よ。おなじ。
「みにくい花」ってなに。
そんなのいやだよ。
誰か言ってよ。
「きみはきれいだよ」
って。
嘘つき。
あたし、人に見られると恥ずかしいからって言ったのに。
あなたはいつも
「ちょっとだけでいいから」
って笑って手をぎゅってするの。
あたしが「まだ?」「ねぇ、まだ?」ってきいても、
「うん、もうちょっとだけ。」って、あなたはぎゅってするの。
あたしがきくたび、あなたはぎゅってするの。
あたしがきくたび、あなたはぎゅっとしてくれるの。