七瀬

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9/17/2023, 3:09:38 PM

【花畑】


よく「脳内お花畑だね」と言う人がいる。
要するに、何だか幸せそうに見えたり、平和染みた考えや価値観のことを皮肉めいて表現する言葉のよう。
ただ、私はそんな"脳内お花畑な人"に助けられたことがある。

私は、大学受験に失敗し、浪人を経て現在社会人になる。受験失敗をした年は、本当に地獄のような1年間だった。親には「生きてる価値ないね」と、お金をかけてきたことを悔やむような言葉をかけられ、自宅で浪人をしていたから、周りに同じような受験仲間がいるわけでもなく、ただただ孤立した小さな小さな世界で、ひたすら勉強をしていた記憶がある。そんな時に、ある日ふと「ここから消えたいな」という気持ちになった。勉強から逃れたい、楽になりたい、(親から)許されたいーーー、色々な葛藤があったんだと思う。私は何を迷ったか、中学時代の親友に連絡したのだ。

「私、生きてる価値ないから、死のうと思う」
「何で?価値ないって決めるには、早すぎない?」
「親に言われたし、私は何よりもう勉強したくない」
「勿体無いよ!きっと、上手くいくよ!多分!」

こんな感じのことを言われた。きっと上手くいく?…何て無責任な言葉なんだろうと、その当時の私はすごく腹立たしく思った。自分は行きたい進路先で充実していて、私のことなんてどうでも良いんだろうとさえ思っていた。同時に悔しく、たしかに勿体なく感じる自分がいた。結果的に、勉強を諦めることはせず、頑張り続けた結果、大学に進学することが出来た。

そして、大学卒業間近に、遠く離れたところに住む親友に会いに行った時、その当時の話をした。どうしてあんな事を言ったの?と聞いたら、「思い詰めている人は、本当は止めてほしくて連絡してくる。私だって、思い止まって欲しいと思った。だから、敢えて気持ちが軽くなるような言葉を発したんだと思う」と。
たしかに、拍子抜けするような無責任にも聞こえるような言葉に見えて、励ましてくれていた。だから私は、今あの時自分で人生を終わらせなくて良かったと感じる。

今でも、親友は新しい家族が出来てからも、たまに連絡をくれる。その度に私は当時のことを思い出し、心の中で感謝しながら、今日生きていることを噛み締めるのだ。