冬になったら
家を出た瞬間はーっと息を吐く。
「まだ白くないな」
もう少し寒くと願う心と裏腹に
寒い手をこする。
でも息が白くなるとちょっと嬉しい。
冬になったら
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はなればなれ
「高校に行ったらうちらも離れ離れや」
『そやなー、ちょっと淋しいな、』
「やね、でもそれぞれの進路行くからしゃなーないか」
『そやけどーー、でも、また会おうな、』
「うん!また会うのだ!」
『また明日なー』
「そやな、また明日ね」
中学を卒業した高校に行く私達。
明日会える保証はないけれど、
また明日
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子猫を拾った。
何か酷い仕打ちを受けていたみたいだ。
命じないと動けない。
自分の意志が無いみたいに、
いつか笑顔を見せてくれるまで俺とあいつと一緒だぜ
子猫ちゃん
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秋風で心を満たした。
誰もが一度は感じたことがあるはず。
上がりからの下り、少しだけの準備期間。
下りからの上がりまで、少しだけの準備期間。
似ているようで違う風
ふんわりとした晴れ模様。
ちょっぴり緊張を感じた。
高く伸びてく夕焼けが。
一番綺麗に見える時期。
少しの準備期間の間に沢山の思い出。
秋風が冷たく感じるこの頃に、
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また会いましょう、
「有り難うごさいました。
的場様のおかげで我が一族は救われました。」
『はは、やめてください様付けなんて、
大したことはしていませんよ、』
「いや、しかし、」
『それでは。いくぞ鈴、』
コクと頷いて
レイと呼ばれた少女は的場について行った。
不敵な笑みを浮かべ彼は風に長く伸びた髪を揺らした。
天気外れの番傘に、似合う和服姿
見慣れぬ少女が後をついて行く。
他の者には見えぬそれが私達を煩わす。
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夏目友人帳より