※長いです※
単刀直入に言う。私は親友のことが好きだ。恋人としてとか友達としてとか関係なしにただ、親友のことが好きだ。
親友が私以外の人と楽しそうに話しているのを見ると腹が立つし、その子に彼氏が出来たとしたら私は嫉妬で気が狂ってしまうかもしれない。
でも彼女と恋人同士になりたいかと聞かれたら、きっと「なりたくない」と答えるだろう。彼女の恋人になりたいわけでも、彼女を一人占めにしたいわけでもない。ただ、ずっと私のことを見ていてほしい。
こんな私を自分勝手だとみんなは思うだろう。私だってそう思う。こんな自分が嫌になる。親友に動けなくなるほど熱い気持ちを縛られて、寝る前に何度も彼女のことを思い浮かべては焦がれていた。
そんな親友はもうすぐで転校してしまうらしい。色々事情があるみたいだったので深くは聞かなかった。大好きな親友と離れ離れになってしまう、それがここ最近で起きた一番のショックだ。
叶うはずもないこの気持ちも、親友の引っ越しや転校と共にきっぱりと忘れようと思っていたある日の下校途中。私はこの日を忘れることはないだろう。
「今日はちょっと寄り道してもいい?」
親友の隣に並んで歩いていたら、突然彼女から提案された。
「もちろん。どこ行くの?」
「ついてきて」
どこに行くんだろう。そう思いつつ、何も考えずに彼女について行った。
たどり着いた先は公園だ。その公園は崖の上にあり、町全体を見渡せるほど高かった。公園の端には柵があり、その柵の向こう側に町が見える。
今は夕方ということもあり景色は格別だ。親友は柵の方に近づき、振り向いて私を手招く。親友の隣に並ぶと、夕日に照らされた町が濃いオレンジ色の影を作り、より夕日の存在を大きくさせていた。
親友の視線に気がついたのはその景色に圧倒されていたときだ。ふと隣を見ると、親友は私のことをじっと見て微笑んでいた。
「え笑、何?笑」
そう言うと彼女もはは、と笑った。
「ここお気に入りなんだ〜。家から近いからたまに来る」
たしかに、この公園から伸びる一本道を歩いて行けば彼女の家に着く。家から近いところにこんなにいい景色を見られる場所があるのが羨ましい。
「ねえ、覚えてないかもだけどさ」
何か言いづらそうに彼女が話し出す。
「保育園生だったとき私らさ、結婚ごっこしてたよね」
私と親友は保育園から高校まで同じだった幼馴染だ。もちろんその時のことも覚えている。ティッシュを体中に貼りウェディングドレスみたいにし、頭に細長い紙をカチューシャの様につけてそれを「ティアラ」としていた。その姿で手をつなぎ、「けっこんしました!」と保育園の先生に言いまくる遊びをしていた。
とても懐かしくて可愛い思い出だが、どうしていきなりそんなことを言うのだろう。
「懐かしいね。覚えてるよ。あの時さ、結婚式も挙げたよね笑 それにキスもした笑笑 恥ずかしいからって誰もいない隅っこでちゅって笑」
笑いながら思い出話をする私に彼女はだんだん恥ずかしくなったのか顔を合わせなくなった。私の気のせいかもしれないが、耳も赤かった気がする。そりゃそうだ。こんな話されたら誰でも恥ずかしくなる。
「覚えてるんだ。…びっくり。……あのさ、」
彼女が急に顔を見てきて言う。
「私、本気に、なっちゃった……」
「…え…?」
「正直、あの時からあんたのこと好きだったんだと思う。…キ、スした…とき夢みたいだなって思って……」
どんどん声が小さくなっていく親友の言葉に反して私の心臓はどんどん大きくなっていく。
「え、え…?好きって……?…え、恋人、として…?」
戸惑いながら聞く私に向かって彼女は小さくコクっと頷く。
「急にこんなこと言ってごめん。多分会うのが今日で最後になるから、これだけ言いたくて……」
今まで私が親友に抱いてきた感情を親友は私にも向けていたんだ。そう思うと、私の「いくら好きとは言っても恋人同士になりたいわけではない」という気持ちはどんどん薄れていった。……恥ずかしさもある、しかしそれよりも、今親友が本当に欲しているものを与えたいという衝動に駆られる。
「…私もずっと好きだった。……最後になるなら、もう一回、しよ…」
驚きつつ希望に満ちた親友の顔を無視して、私は彼女に手を伸ばす。彼女はきっと、あの時のことを思い出しながら私の唇を待っていることだろう。
【私は親友が好き。あの時見た夢をもう一度】
落ちる感覚というのは不思議だ。その時だけ何にも頼れない。今、私が底なしの穴に落ちていると仮定しよう。立ってバランスを取ろうにも立つために必要な足場が無い。体を大の字に広げ、落ちていこうにもその後はどうする。逆に後ろ向きに落ちるのはどうだろう。いや、きっと無理だ。底なしだから受け身を取ろうにもどのタイミングでやればいいのか
わからない。どうにもバランスを取れず、体がよろめいてしまう。おまけに身体の中の内臓が上がっている感覚もある。また落ちている身からすれば、勢いよく風が吹いているような感覚のでうまく息もできないだろう。
そんなとき私たちは何をすればいいのか。
知らん。