夢の断片
海の向こうにいっても
宇宙の彼方へ行っても
夢の断片しか落ちていない
見えない未来へ
吹き抜ける風
教室の窓の隙間から吹き抜ける風
窓側の席は嬉しかったけど
冬は寒い
眠たい目を擦りながら
ふと外に視線をやる
1時間目の自習は眠たい
まだ雪は降ってないけど
空はかなり綺麗だ
澄んだ青空はずっと見ていられる
風が吹くと体の芯から冷えるような
冷たいすきま風が顔にあたって
前髪を少し撫でる
冬の空気を吸うと
鼻の奥がつーんとなる
これがたまらなく好き
冬にしか味わえないもの
記憶のランタン
書庫の奥深くまで見ているが
「見当たらない」
埃がかった薄暗い部屋で1人呟く
マスクでもしてくれば良かったな
そんな事を考えながら
咳をする
埃で喉が痛い
「なんでこんなに探してないんだよ」
1人でまた呟く
ライトを照らしたいが荒れた部屋を見るのも怖いし
虫も怖い
勇気をだしてスマホのライトをかざす
そこにはぐちゃぐちゃに置かれた本と
埃まみれの荒れ果てた棚がある
あまり目を向けないようにしたが
虫の死骸もある
ふと後ろに視線を感じた
すぐに後ろを振り返る
「誰かいるのか?」
誰も居ないと分かっていても
聞かないと落ち着かない
急に怖くなった
このままこの部屋で探し続けてもいいのか
でもこうなったらもう引き返せない
もっと奥まで
もっともっと奥まで
埃で咳が止まらなくなっても
そんな事は気にしない
手探りで本の下に埋まっている物たちを触る
固くて大きいものがあった
「なんだこれ」
それは壊れかけたランタンだった
「なんでこんな所にランタンが」
昔の俺のおじいちゃんが使ってたやつか
そんな微笑ましいような憎ましいような
心地がした
そのランタンに触れる
「なんかおかしい」
それに触れた時なにかの突起がある
少し固かったそれを押すと
「光った」
俺は頭が真っ白になった
「なんで?
ここにはもう10年以上誰も来てないはず」
さっきは後ろを振り返ったが
今回ばかりは後ろを振り返る勇気がない
勇気が無いと言っても
どれだけ力を振り絞っても後ろを向けない
俺は
俺以上にでかい何かに口元を押さえつけられている
「お兄ちゃん来るの遅いよ
俺の大好きなじっちゃん殺したのに良く来れるね
俺はじっちゃんが死んでから毎日来てた
お金探しに来たんでしょ?
俺が嘘のこと言ったの知らずにね」
弟がなんでここにいる?
俺が殺したのが何故わかる
弟は家から出て行ったはず
呼吸が苦しくなる
ただでさえ酸素が薄い閉めきった部屋だ
苦しい
「俺ね
じっちゃんに貰った大切な宝物あるんよ」
~
「じっちゃん!廊下真っ暗で怖いよ…」
「大丈夫だよ じっちゃんが一緒におるよ」
~
「こっちおいで ほらこれプレゼント」
「なになに!これなに!」
「これランタンって言うんだよ
ボタン押したら光るやろ?」
「すごい!すごい!!!」
「これで怖いものないな」
「じっちゃんありがとう!!」
~
「俺はじっちゃんにランタン買って貰えたのが
すげー嬉しかった。今でも鮮明におもいだせる
くらいにな。」
俺は血の気が引く
「じっちゃんの家来た時血流してた
隣にな俺が貰ったランタンも血まみれだった」
「あの日たまたまなランタン持ってきとって
久しぶりやろこれ!って見せに来たんよ」
「明日取りに来るけ!そう言って家出た」
「あんな嬉しそうなじっちゃんが
俺が置いてったランタンで殺された 」
俺は呼吸の仕方を忘れた
力が少しづつ入らなくなる
脳みそから聞いたことがない音がする
「俺もう訳わかんない」
「俺の記憶のランタンは
こんな人を殺める物じゃないのに」
俺は壊れた
壊された