6__力を込めて
うーん。
思っていたよりも硬い。
想定よりも時間がかかる。
一刻も早くこの場を離れないといけないのに。
人体の仕組み、もう少し勉強してから実行すれば良かったな。
もう一度、力を込めて。
5__過ぎた日を思う
ああ、もしあの日あなたに思いを伝えていれば。
もし、私が臆病じゃなければ。
もし、あの時、あの瞬間あなたの気持ちに気づけていれば。
そんなことを願ってももう遅い。
目の前には彫刻のように白く、美しいあなた。
深紅のカーペットに横たわるあなた。
私はなんてことをしてしまったのだろう。
たかがすれ違い、されどすれ違い。
今更後悔しても、私にはあなたとの過ぎてしまった日々を思い出し、浸ることしかできない。
4__星座
夜の冷たい風。
今日は雲ひとつない。
空には燦然と輝く星。
とっても綺麗だ。
よく神話では神が星座になるとか、故人が星になるとか言う。
君もそこに居るのだろうか。
私も星のひとつとなって、貴方と星座を作りたい。
今行くよ。
3__踊りませんか?
愛した人々の鉄のにおいが充満する地下室。
これで何度目だろうか。
厚く重い扉を開ける。
長く冷たい廊下を通り、バスルームへ。
シャボンの匂いに包まれ、黒を洗い流す。
衣装部屋へ向かい、白を身に纏う。
屋敷の外へ出て馬車に乗る。
優雅な音楽。着飾った人々。庭に咲き誇る真っ赤な薔薇。
今日も私を仮面を被るのです。
そうすれば、ほら。
「踊りませんか?」
貴方じゃなくても私を愛してくれる人はいる。
2__巡り会えたら
運命の人との出会い。
そう聞いた常人はきっと、御伽話に出てくるような王子と姫の出会いとストーリーを想像するのだろう。
私はそんなものには一切興味を示さない。
自分でも変だと思う。
周りの友達はそんなストーリーを夢見て頬を染めていた。
私がどんな運命の人との出会いを夢見るのか。
君にはそれを聞いて欲しいんだ。
私はね、私のことを▓してくれる人に出会いたいの。
なんでかって?。
だって、私を▓すために少しの間でも私の事で頭をいっぱいにしてくれたんでしょ?。
それって何よりも幸福を感じない?。
ああ、息が苦しくなってきたな…
ねぇ、君と私の出会いって、運命じゃない?。
素晴らしい、巡り合わせじゃない?。
あなたも、“そんな”運命の人と、巡り会えたら、良いね?。
さようなら