5/19/2023, 7:18:55 PM
「明日、引っ越すんだ」
幼なじみのハルは『明日雨らしいよ』と同じくらいのテンションで、ユキにそう言った。だから一瞬、へえそうなんだ、と返そうとして、
「え?」
思わず足を止めた。数歩先を歩いたハルも、足を止めてこちらを振り返った。夕焼けのきれいな空をバックにしてハルはいつもと同じように笑った。茶色の髪がきらきらと夕日を反射していた。
「さみしくなるねぇ」
全然寂しそうではないセリフ。引越し?ハルが?
ユキとハルは17歳。0歳の頃から家が近所で、親が仲良くて、ずっと一緒だった。もう家族みたいなものだと思っていた。
それなのに、引越し。それも、前日に告げられた。親にも隠されていたし、ハルにも隠されていたことがショックでらたまらない。
「なんで黙ってたんだよ」
「だってユキ怒るじゃん」
「今怒ってるよ」
「ごめんて」
ハルはそのままくるりと前を向いて、勝手に歩き出した。昔からこういう奴なのだ。
「待てって」
「……待たないよ」
すたすたと歩いたままハルは、先程とは全然違うテンションでそう言った。
「待たない。私、彼氏と同棲するの。幸せになるの。だから、」
ハルは少しだけこちらを振り返ると、困ったようにちょっと笑って
「ユキも早く彼氏見つけなね」
先程より早い速度で歩いていった。もうこっちは振り向かなかった。