マンタ

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9/1/2022, 1:42:56 PM

上手くやれているはずだった。
私は学校での人間関係のリーダー的存在、みんなから慕われる優等生を毎日演じていた。
クラスは王国、私は女王様。明るいお喋り好きな国民は皆賛辞を口にし反抗的なものはない。

事が転倒して真っ逆さまに急降下したのは夏休み前の登校時間、国の王座に座る私の前を拒んだのは他国から転校してきた大人しく根暗そうな国民。

「友達いないんでしょ」

礼儀知らずは長い髪の隙間からニタニタ笑う。この時点で彼女は根暗国民から疫病神にランクアップした。

「貴方よりは沢山いるわ」

ハッと鼻で笑って自分の机の引き出しをあさり、彼女が入れたカラフルな紙束を押し付ける。彼女は目を見開いてから二ヘラと笑った。そのまま頭を下げて逃げていくものだから少し辛辣過ぎたかもしれない。また会った時に気にしていたら謝ろうと思う。




(花火大会の日にあの転校生川に──)
(精神的にダメだったんじ──)

少しだけ見えるクラスLINEの文章は噂好きな国民らしく考察で溢れかえっていた。トーク数は100は軽く超えて、多分もっと増えるだろう。

「友達、いないって言えばよかったかな」

夜遅くなってなお増え続けるLINEをどうしても開く気にはならなかった。