祖父の晩年は認知症で
家族はおろか祖父自身の名前もわからなくなっていた

旅行のお土産を渡そうと遊びに行った
その日はたまたま機嫌が良くて
ずっと話を聞いてくれた

帰り際に
笑顔でそっと頭を撫でられた
認知症の症状で怒りっぽいことが多かったが
その時は昔の優しい表情だった

たまに思い出す
シワシワで温かくて優しい
手のひらの贈り物

それなりに幸せな人生ではあるが
心の片隅で猛烈に後悔していることもある

行けばよかった
頑張ればよかった
続ければよかった
耐えればよかった

もう二度とチャンスは巡ってこない
後ろを振り返りつつ
これで良かったんだと思える人生を
納得できる人生を
後悔を昇華させる人生を
必死に生き抜かなくてはいけない

外は雪の静寂に包まれている
しんしんと降り積もる雪
寂しささえ感じる

だから帰宅後の温かいご飯にお風呂
体が温かくなるだけで
幸せな気分だ

あの日君が見た夢を
もう叶えただろうか？

自分は諦めてしまった
大きくて高い壁と
途方もない時間を要する努力に
立ち向かえなかった

もし、君が夢を叶えて
毎日キラキラと輝いて充実していたら
もう自分のことは忘れて欲しい
叶えられなかった報告をするのが辛いから

昨日今日が辛くても
明日への光があると信じ
何とか毎日を送っている