教室から聞こえる騒々しい喧騒。
微かにコーヒーの匂いがする。
確か隣は職員室だったか。
今の時間は2限目。
俺達のクラスは数学の授業中だ。
なのに…
「こんの馬鹿…お前があんなこと言い出さなきゃ…」
「はぁ!?オレのせいかよ!?お前だって…」
「いやお前のせいだろ!!!お前が奥の方行ってみようなんて言うから!!!!」
「お前も乗り気だっただろ!!!」
「ちっげーよ馬鹿!!!」
俺達は今図書館に閉じ込められている。
元はと言えば…
「図書館の奥の方にちょっとアレな本があるらしいぜ」
なんて言い出して…無理やり俺のことひっぱって…
チャイムの音に気づかないまま…図書館の鍵を閉められたってわけだ。
「「…」」
沈黙が続く。
ったく今日の分のノートどうすんだよ馬鹿。
あとで責任取れよな。
――――――――――――――――――
「結局…無かったな」
「まだ言ってんのかよ…」
「だってさァ…」
下を向いてもごもご口を動かす馬鹿を見つめる
…綺麗な顔してんな。ムカつく…
口とんがらせてるし。眉間に皺を寄せてるし。
喋んなきゃイケメンってこういう奴のことを言うのか。
…今はこいつと俺の…二人…だけ。
…何考えてんだか。
キーンコーンカーンコーン…
やっと解放された。
…でも…まあ。…あーー!!!散々な目にあった!!
「俺になんか言うことあんだろ馬鹿」
「一言余計!!!そうだな…悪かったよ」
「…許さねぇ」
「はぁ??!アイス奢るから!」
「やだ」
「ラーメン!」
「無理」
「iPhone!」
「っはは!冗談だよ、全部鵜呑みにすんな。だから変な噂に引っかかってこんな目に遭うんだよ」
「まだ怒ってる?」
「元から怒ってねぇっての」
こいつと二人だけの時間を過ごせたんだから。
悪くはなかった。
【二人だけの。】
今年の夏は異様に暑い。いや毎年。
日本の夏は暑すぎる。
いつもしつこくひっついてくるアイツも
さすがに暑苦しいからしないなんてほざいてた。
暑すぎるが故に本当に夏なんだろうか、なんて矛盾したことを考えてしまう。
ちりんちりん
生暖かい風が吹くと共に涼しげな音が聞こえる。
「なぁ聞いたか?今の。」
「聞こえた。風鈴か。」
「風鈴ってタイカンオンド?みたいなのを下げるらしいニホンのフウブツシってやつだな!オレには全くわかんねーけど。あ゛〜…クソあぢぃ〜…」
「いっつも暑っ苦しい絡みしてっからじゃねーの?」
「うっせ」
確かに風鈴の音で涼しくなる…なんて俺にもよく分かんねえな
…でも夏の風物詩ってのはなんとなく分かる気がする。
昔っから風鈴が揺れると聞こえるか確認してくる
コイツ。その度に涼しくなんねぇ〜…なんて言って。
夏は暑くて嫌いだがコイツと過ごせるなら悪くない。
【風鈴の音】