KararaK

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2/21/2026, 11:21:46 PM

 アカウントを削除した瞬間、画面は真っ白になった。
 私の全てだったフォロワー数6,394の数字は、驚くほど軽く消えた。

 私は0になった。

 新しいアカウントを作る。フォロワーは0。投稿も0。プロフィールには名前だけを書く。余計な肩書きはつけない。
 最初の配信は、夜の台所だった。母がきっと壊してしまったのだろう、白い破片が床に散らばっていた。

 コンロの青い火と、湯の沸く音。私は黙ってスープを作る。誰もコメントしない。視聴者数は0のまま動かない。それでも、胸は不思議と静かだった。
 台本も、演出も、泣き声も、壊れた食器もいらない。新しい今だけの私がここにいる。


 画面の隅に、小さく数字が変わる。
 「1人が視聴中」
 コメントはない。ただ、誰かがそこにいる。

 0からの私は少し緊張して「はじめまして」と言った。



『0からの』

2/21/2026, 1:59:59 AM

 涙は、練習すれば出せる。
 まばたきを減らし、息を浅くして、可哀想なドラマの主人公の気持ちになりきる。
 カメラの向こうでは「こんなに大変なのに強いね」「泣かないで」と優しい文字が流れ、同情は数字になって積み上がる。

 私はその数字で出来ていた。

 今夜も、父が帰ってこない。メッセージには既読もつかない。別の部屋では母がなにか大きな音を立てている。
 台本はないのに、配信ボタンを押してしまう。画面に映る自分は、思ったより醜い顔で泣いていた。声が震えて、うまく喋れない。
 コメントはすぐに流れた。「今日リアルだね」「設定強化?」「ちょっと暗いよ」。視聴者数が、静かに減っていく。

 私が減っていく。

 私はようやく知る。みんなが優しかったのは、私のためじゃない。泣ける物語のためだったのだ。
 配信を切ると、部屋はただの夜に戻る。通知は鳴らない。布団の中で声を殺したとき、初めて本当の涙の味がした。

 私はみんなの中からいなくなった。



『同情』