何もかもが嫌になった僕は、電車で終点まで行って、そこからさらにバスに乗った
目的があったわけじゃない
とにかく現実から逃げ出したかったんだ
行き先も確かめずに乗ったバスは、山の奥の古びた茶店の前で停まった
意外や意外
そこは天然氷で作ったかき氷が人気の店で、行列ができてたんだよね
僕も行列に並んで、ほうじ茶白蜜っていうのを頼んだら、これがめっちゃおいしくてさ
完食する頃にはすっかり元気になって、次のバスで帰って来たってわけ
「男なら思い切って告白しろ
上手くいかなくたっていい
告白することに意義があるんだ!」
そう言ったのは僕の叔父さん
恋の悩みを打ち明けたことを心底後悔したよ
僕はそんなの無理
そもそも、上手くいかなくていいなら相談なんてしないんだけど
金持ちの両親にチヤホヤ育てられた、美人だけど高慢ちきな双子の姉妹、蝶子と花子の栄光と挫折
それってコメディ?
えっ、超シリアスな大河小説なの?
それで新人小説コンテストに応募しようなんて、君、本気で言ってるの?
悪いことは言わないから考え直しなよ
僕は物語の主人公
ヘタレなのも不器用なのも、作者がそういうふうに設定したから
読者が、「おい、がんばれよ」って応援したくなるようなキャラにしたのかな
僕としては、どうせなら、みんなが憧れるアイドルとかの設定がよかったけど
だから、僕が夜も眠れないくらいあの子のことが好きなのも、ちっとも振り向いてもらえないのも、多分、全部最初から決まってたことなんだ
ねえ、ちょっとひどくない?
作者さん、どうか結末はハッピーエンドでお願いします
毎日暑くて、ちょっともうカンベンしてって感じだよ
ジリジリ太陽に照らされて、君に会う前にアイスクリームみたいに溶けちゃいそう
でも、やっぱり君に会いたいから、クーラーの効いた図書館で待ち合わせなんてどう?