まるで修行中

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9/4/2023, 3:04:31 PM

諦めと不安を振り切り髪を染め
きらめきを取り戻しに行く
きっかけをくれたのは
一瞬だけ触れたあなたの指先
私はこれから少しずつ
きらめきの欠片を手に入れる
一歩





「きらめき」

9/3/2023, 10:16:27 AM


「何か、いつもと変わったような事はありませんでしたか? どんな些細なことでも構いません」
男は尋ねた。
「そうですね…。いまここにいるのは、昨日ではなく、今日の息子です」
両親はそう答えた。
「そうですか。」
男は顎に手をやり、称賛のため息をついた。
「さすがご両親ですね。昨日と今日での違いがわかるなんて。よくお子さんのことを見ていらっしゃる」
隣でこのやり取りを聞いている俺の肩に、飛んでいった鳩が糞を落としていった。





「些細なことでも」

8/30/2023, 12:10:29 PM

帰り道
お気に入りの香水の
つけた香りが変わるのは
すべてをさらけるようで恥ずかしい
どうかあんまり気がつかないで
隣の君の温かい腕





「香水」

8/28/2023, 3:54:26 AM

雨に佇むわ
真綿のような
縫い針のような
細く生ぬるい
まっすぐな雨に
トレンチコートの腰は細く締め
ハイヒールと
それとお揃いの真っ赤な口紅を引き
濡れた黒髪は艷やかにまとわりつく
ウイスキーを煽り
溶け出して潤めいた氷をさげずむ
私は片付いたばかりの食卓に肘を付き
壁の窓の向こうを眺める
ぼんやりと
ただぼんやりと
たったいま産まれたばかりの別の私に
あの日観た、あの映画のあの女に
どうすれば
このくだらない魂を宿すことができるのかと
ぼんやりと
ただぼんやりと
車の弾く、かすかな雨音を聞きながら
わりと真剣に考えている





「雨に佇む」

8/23/2023, 4:54:00 PM

吸ったり吐いたりを繰り返し
いつしか私は海になる
暗闇に抵抗し、ほのかな明かりに照らされて
ゆっくりゆくりと波になる
引潮と満潮と
このまるで小さな身体の中で
大きな大きな海となる
海へ
初めは海から産まれたという
ああそうか
だから私は真似をする
小さな波は大きな波へ
やがてふたたび小さな波へ
海へ
とろけだし、ふたたび海へ還るまで
遠くの大地で雲となり
いずれ還るその日まで
たくさんの海が
そこらかしこで凪いでいる




「海へ」

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