★距離★
ほんの少し、手を伸ばせば届くのに。
私があなたに触れることはできない。
目の前には確かにあなたがいるのに。
私とあなたの間には、まるで見えないバリアがあるみたいで。
どんなに深く想っても
どんなに強く願っても
それがあなたに届くことは、ない。
あなたはとても近くて、とても遠い。
許されるならーーー
その手に触れたい。その肩に触れたい。その頬に、髪に触れたい。
少しでいい。この手に貴方の温もりを感じることができたなら……。
それだけで……それだけでいい。
きっとそれだけで、一生分の幸せをもらえる気がする。
だけど、それは叶わない。
先生(あなた)を好きになったことを…この恋を、神様は多分、許してはくれないから。
★微熱★
本当に、どうかしてしまった……そんなこと、痛いくらい自覚してる。
だけどもう、どうしようもない。
どうしていいか分からない。
あなたの目に、あなたの声に、あなたの手に、笑顔に、些細な仕草に、優しさに、温かさに、その存在に、その眩しさに
心ごと抱(いだ)かれてーーー
私の心臓(からだ)はもうずっと、冷めない微熱を帯びたまま。
あなたの隣で、あなたと生きる未来……夢物語だなんて分かってる。
住む世界が違うって、近くて遠いって……そんなの分かってる。
それなのに、ありもしないことを期待してる自分がバカだって……自分がいちばん分かってる。
もう……気持ちにブレーキが効かない。
この熱を下げる術(すべ)が、私には分からない。
いっそあなたへの想いで溶けて消えてしまえたなら
ずっと幸せなままでいられるのかな。
★宝物★
あなたに出会ったこと。
あなたと積み重ねてきた時間。
あなたにもらった沢山の優しさや温かさ。
あなたが教えてくれた沢山の気持ち。
あなたの、存在。
宝物。
いいえ。私にとってのあなたは、宝物よりももっともっと大事。
この先もずっとずっと、胸のいちばん深くで、心のいちばん奥のキレイな場所で、やわらかく抱き締めていたい光。
★キャンドル★
外がすっかり寒くなった冬の夜
明かりの消えた部屋で、そっと火を灯す
優しく、温かく揺らめく炎をじっと見つめていた私は、やがて目を閉じる
静かに、ゆったりと流れる時間
疲れた心が解かされていく
さあ、明日からもまた頑張ろう。
★たくさんの想い出★
あなたと初めて出逢ってからのことは
“思い出”と言うにはあまりに簡単すぎて
“記憶”と言うにはあまりに大切すぎて
ーーー想い出ーーー
私にとって、あなたと重ねてきたたくさんの時は、想い出と言う名の光の粒。
医師と患者。
どれだけたくさんの時を過ごしても、この距離が変わることは、多分ない。
この先に、あなたと生きる未来が待っているなんてことも。
それでも
それでも………。
会ったばかりの頃は何となくぎこちなかったけど、診察、手術、入院、経過観察…何度も通ううち、あなたがほんの少しだけ、心をほどいてくれていることが、よく笑ってくれるようになったことが、時々、ふと名前で呼んでくれることが、吸い込まれそうな真剣で優しい目が、いつも安心をくれる穏やかな声が、全てゆだねたくなるような温かくて力強い手が……これまでのこと何もかもが、嬉しくて、切なくて、幸せで、苦しくてーーー
ねぇ、先生。
先生とのたくさんの“想い出”は、ひとつひとつは小さなカケラみたいなものかも知れない。
だけど、ひとつひとつがとても眩しい。
私はそれを大切に集めて大事に守り続けたいと思う。
だってこの先もう二度と
先生以上に誰かを想うことなんて
ないと思うからーーー