ただいま、夏。
さっきLINEした通り、話があるんだ。……その顔は、もう大体わかってるんだろ?
ごめん、出てってくれないか。
俺は……秋とこの国で暮らしたい。
夏のこと好きだったよ。でも、夏は変わってしまったよな。俺は出会った頃の、最高気温28度くらいの夏が本当に好きだった。39度で人を殺しにかかるお前とはもうやっていけない。
頼む、夏。
いつか、いつかもし夏があの頃の夏を取り戻したなら俺は言うから。
おかえり、夏。と。
ぬるい炭酸と無口な君
なんかそんな感じのJ-POPの歌詞なかったっけ?
と記憶を探ったら
RADWIMPS スパークルの中の
まどろみの中で生ぬるいコーラに
ここでないどこかを夢見たよ
かな。
ぬるい と 炭酸/コーラ しかかぶってないけど確実にどこかリンクした感性で書かれた言葉だと思う。
波にさらわれた手紙を必死にどこまでも追いかけていったあの人
書いてあったものは何?
それは恋人からの愛の言葉
それはもう会えない友人からの励ましの言葉
それは恩師からの人生の道標になる言葉
それは過去の自分からの時を超えた言葉
それは大事なパスワード(それだ!)
朝の少しひんやりとした湿気をまとった空気の中、家を出る。
ラジオ体操の歌はちょっぴりダサいと思いながらも、
「あたらしい朝が来た、希望の朝だ」
これは本当にいい歌詞だなあ。その通りだなあ。なんてまんまと歌ったりして、恥ずかしがりながらも第二までしっかり体操して。
家に戻って麦茶を飲んで、扇風機の前でゴロゴロしてるうちに蝉が鳴き始める。宿題……はさておいて、遊ぶ時間だ!今日は誰を誘おうかな?
「今日の最高気温は31度でしょう」
天気予報の声を背に飛び出すと太陽が肌をじわりと焼くけれど、そんなことが気にならないくらい夏の空が青くて眩しかった。長く、しかし確実に終わりの見える夏は切なさを内包していて、それを全身で感じていた。
ねえ、今年の夏も地獄のようだよ。昔の方が良かったなんて絶対言いたくなかったのにさ。
今、あの夏に会いたい。
8月、君に会いたい。
君の笑顔が愛しくて眩しくて、私は目を細めた。
太陽のもとではしゃぐ君を、アイス片手にクーラーの効いた部屋の中から眺める。
え?だって外は熱いし……子どもにはお庭プールを楽しませてあげたいけど、私には堪える体力がないから……パピコおいしい