〝1つだけ〟を持つ化け物がいた。
化け物はなんでも1つだけを欲しがり、ねぐらに大事にしまっている。
それは下駄や箸のかたっぽだったり、何かの部品の一部を〝1つだけ〟だったり。
そのくせ飽きっぽいので、たまに通りかかった人間にあげてしまう。
突然「あげる」とガラクタを渡されても、簡単にもらってはいけない。
親しくなったと思っても、化け物は化け物なのだ。
物を受け取ったと思ったら、すぐに逃げろ。
「代わりに、ちょうだい。〝1つだけ〟」
その声を背で聞き、遠くまで逃げろ。
あなたの体の中身が〝1つだけ〟、取られてしまうから。
上から下へ、まっかさかさま。
赤い海に、群がる野次馬。
多くがバッドエンドだと評価しても、
これが私のハッピーエンド。
ヒヨコだ。
テーブルの上ににヒヨコがいる。
どこから入ったのだろうか。
いつ入り込んだのだろう。
こういう場合、どこに報告すればいいのだろうか?
警察…気づいたらいた。信じてもらえない。
保健所…連れて行ってくれるかもしれないが、その後を考えると、スマホに手が伸びない。
私の思いも知らず、ヒヨコはテーブルの上をちょこちょこぴよぴよと走り回る。
じっと見ているのに気づいたヒヨコはこっちをじっと見ると、淹れたてのコーヒーのカップの裏に隠れた。
湯気の向こうから、声が聞こえる。
「そんなに見つめられると…照れる…ピヨ」
喋った!!!!!
「私は料理ができる!」
「僕は料理はできないけど、洗濯ができる!」
「私は洗濯ができないけど、掃除ができる!」
「僕は掃除ができないけど、家の中で働いているから、子供の送り迎えがしやすい!」
「お互い…」
「羨ましいよね」
「いいなあぁ〜…!」
仲が良いからと、やたらとくっつけたがるクラスメイト、大嫌いだった。
お前が私とくっつけられる噂が流れたら、どうするつもりだったのかと小一時間問い詰めたい。