『20歳』という年齢は人生の中でも特に特別視される年齢であろう。子供から大人に変わる年。
ついこの間まで子供だなんだと言われてきたのに、ある日を境に「もう大人なんだから」と言われる。なんて無責任なことだろうか。
大事なことは「子供だから」と教えてくれないくせに「もう大人でしょ」と突き放される。
お酒が飲める。煙草が吸える。『成人』の札が貼られる。自由が手に入る。
19歳と20歳では周りの大人達からの評価がガラリと変わってしまう。たった1年の差なのに、法律さえも掌を返したように全くの別物になる。
早く成人したい、そう思っている間が1番自由なのだろうな。
#20歳
三日月を見ると不安になる。
満月が来るまであと半月しかないことが分かるから。
あの青白く不気味に光る円形が空の上に現れる日が恐ろしくてならない。
近頃満月が近づくにつれて少しずつ体調を崩すようになってきたが、きっとそれは年々僕の満月を恐れる心が大きく膨れ上がってきているせいなのだと思う。
「身体の弱い母の見舞い」という言い訳もいつかは通用しなくなるんだろうな。なんていったって僕のルームメイト達はとっても頭が切れるから。
だけど本当の理由は絶対に教えられない。教えたくないんだ。だって知られてしまったら、せっかく学校に行くことを許されたのに、せっかく友人になれたのに、何もかもが全て台無しになってしまうのだから。
こんな僕が居場所を求めることが間違いだったんだ。
…ずっとそう思っていた。
だけど、その考え自体が間違っていたと教えてくれたのは他でもないルームメイト達。僕の、親友。
生きてていいんだって、絶対に離れないって、全力でぶつかって体当たりで教えてくれた。
今では三日月を見ると少しわくわくするようになってきた。だって満月の日になれば誰も知らない、僕達だけの、四人だけの秘密の時間がやってくるのだから!
#三日月
さ、パーティーの準備に取りかかろうか。君も手伝ってくれないか?
あまーいケーキに温かい紅茶、焼きたてのスコーン。どれもティーパーティーには欠かせない。うちの副寮長が作るスイーツは絶品であるが、自分のお気に入りはなんといってもいちごのタルト!これを食べることができるなら毎日パーティーがあっても構わないね!
え?毎日は嫌だ?ふうん、まあ普通はそうか。
さあさあ、あとひとつ忘れてはいけないことがある。これを忘れてしまうとここに居る全員が打首となってしまうからね。ただのひとつも違う色が混ざってはいけない。このパーティーが開かれる時、庭にある全ての薔薇の花は赤色でなければならない。この国ではそういう決まりなのだ。余所者の君には分からないだろうけどね。
全ての準備が整った。ほら、見てご覧なさい。真っ赤な薔薇に、きらきらと輝くフルーツケーキ。透き通った綺麗な水色の紅茶。スコーン用のクロテッドクリームやジャムも様々な種類を用意したから、好きなのをお食べなさい。ああでも、女王様の最近のお気に入りはマーマレードだから、それだけは手をつけないようにね!
それじゃあ、我らが女王様をお呼びしようか!
#色とりどり