《正直》

「正直、しんどい」

そんな手紙を残して、君は消えた。

僕は黙って、その手紙を丸めた。

首を横に振る。

正直でいられないなら。

最初からこうすればよかったんだ。

《梅雨》

梅雨は苦手だ。

思い出してしまうから。

あの雨の日、死んだあの人のことを。

でも、梅雨は嫌いじゃない。

あの人は、梅雨の時期だけ、私に会いに来てくれるから。

《無垢》

染め上げていく。

少しずつ、少しずつ。

真っ白なあなたは、何も疑わず染め上げられる。

ほら、これで。

もうずっと、一緒だよ。

《終わりなき旅》

人生は旅だという。

だからやりたいことをやっておけって。

荒廃した世界で、思う。

この世の全員死んだとして、生き続ける私は、どう旅をすればいいのだろう。

《ごめんね》

一人暮らしのあなたの元に、家族が訪ねてくることになった。

私はその日の前の夜、荷物を持って家を出た。

私は"人ならざるもの"だから。

･･･目が見えないあなたとだから、私はあなたと暮らせたんだもの。

ーごめんね。