寺乃

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7/7/2025, 7:46:02 AM


好きと言えたら、どれだけ楽になれたろう。
好きだと気軽に言いあえる関係だったら、どれだけ良かっただろう。何度も頭をよぎるその言葉が、ベッドに眠る彼の背中を見てまた浮かぶ。でも、もうこんな風に思うのはこれで最後だ。
外は真っ暗だったはずなのに、カーテンの隙間からは光が漏れていた。
今日でこの関係は終わりにする。昨日、そう決めた。
いつもは彼の方が目覚めるのは先だから、寝顔を見ることはほとんどない。顔にかかった髪をよけて、目に焼き付けておきたいという気持ちもなくはなかった。

でも。

目を背けて散らかされた服を拾う。

彼との日々は好きだった。でも、その分苦しかった。
今は、覚悟していたより、ずっと気分は晴れやかだった。
建物から出て、ふと空を見上げる。真っ暗だった空は、鮮やかな水色に染っていた。