「小さな愛」
たまに、自分が分からなくなる。
臓器も、血液も、細胞も、
一つ一つが私の意思関係なく動いている。
ということは、
臓器も、血液も、細胞も、
一つ一つ自我があるのではないか。
知能は高くなかったとしても、
それぞれが何かを考え、感じている。
それの集まりが私自身?
じゃあこの心の声は誰のものなんだろう。
心臓から派遣された血液さんの言葉?
実はね、そうなんだよ。
貴方の頭の中に響いている言葉は、
全てが貴方の声ではないよ。
自分を責める声も、褒める声も、
どこかしらの血液さんの声じゃない?
そう、私たち自身が考えられることはただ一つ。
今日もみんな、私の体で働いてくれてありがとう。
知能の低い血液さんには、
自分を褒めるという概念なんて存在しないからね。
【#163】
「子供の頃の夢」
僕はね
保健室に頻繁に行く人が
羨ましい。
何か持病がある人が
羨ましい。
その本人たちには悪いと思うよ。
本気で苦しんでいて
治ることを祈ってるだろうし。
でもね
幸せで恵まれてて
何も無いからこそ
相談しにくくて
何か違う辛さがある。
病名がある人と比べて
自分は恵まれてるって言い聞かせて。
駄目だよ、駄目だって分かってるのに
僕は病気を羨ましがる。
みんな違ってみんな辛い。
そんな言葉も響かなくてさ。
健康を祈れたあの頃に戻りたい。
今は何故
病気を求めてるんだろ。
【#162】
「どこにも行かないで」
浴槽に沈む。
鼻をつまみ、息を止め、目も閉じる。
真っ暗な世界で聞こえる音は、
自分の鼓動と水の囁き声。
全身の力を抜いて、完全な無の状態。
何よりも非現実的。
酸素を求めて顔を出し、目を開く。
すると、記憶が消えている。
脳は息を止めていることに必死で、
記憶を保存することも、何かを考えることも、
停止しちゃうんだろうね。
正に、目覚めたまま見る夢。
段々苦しさも、酸素という存在も、我も忘れ、
私は水の一部になっていく。
【#161】
「君の背中を追って」
私より優れてるのに、
謙遜なんてしないで。
君がそれなら私はどうなっちゃうの。
私より優れてるのに、
夢が無いなんて言わないで。
私の希望が無くなっちゃうでしょう。
私より優れてるのに、
私を褒めないで。
君を素直に褒められない私が嫌になるから。
【#160】
「好き、嫌い、」
夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
密かに願うは 夜のままの世界
【#159】