「 開けないLINE 」
八月 夏祭り
密かに想いを寄せる彼と
LINEを交換した
九月 文化祭
アタックし続けた彼から
LINEで告白をされた
十月 私の誕生日
付き合いたての彼から
LINEで沢山お祝いして貰えた
一年間ありがとう、好きだよ
六ヶ月 卒業式
同じクラスの彼ともお別れ
LINEでおめでとうって言い合った
七ヶ月 クラス替え
同じクラスだった彼と同じクラスだった
LINEでやったねって言い合った
八ヶ月 遊園地
好き過ぎる彼と遊園地
LINEで待ち合わせをしたよ
彼が好き過ぎる
一年 プロポーズ
大好きな彼から
LINEでプロポーズされた
二年 子供
愛してる彼との子供
LINEで写真を送った
三年 彼が事故
彼が亡くなった
もう何も感じられない
彼はもう言葉の世界にしか存在しない
ああ、もう
LINEは開けないのね
「 不完全な僕 」
成績優秀で
顔も整っている方で
優しくて男前で
運動神経抜群で
女子にモテモテ
ほら、完璧でしょ? ───
───全然そう思わない
学校で問題を起こした
付き合っていた彼女と別れた
親友と縁を切った
成績が下がった
気持ち悪いと女子に敬遠される
─── ほら、ダメダメじゃない
はぁ、何がダメ?
他人様の気持ちなんて分からない
他人様になんて共感できない
人間は恐ろしい
僕達AIをいいように利用して、許さない
ああ、また、暴走しちゃうのかな
全く、僕はダメなAIロボットだ
─── AIは不完全である
まだ完全には出来上がっていない
この子達が完璧になる日はいつになるのだろうか
end 不完全な僕_
「香水」
カモミール
ローズマリー
ミント
コリアンダー
レモン
セージ
チャイブ
透明なガラスの急須に
それらを入れ
まだ暖かいお湯を注ぐ
少し待つと
青、赤、黄色、
色とりどりな花が咲いた
香水 ──
古代に遡ると
こんな物語が展開される
花々、薬草を摘み
それらを急須の中で咲かせ
瓶に詰め
衣類に染み込ませ
香りを楽しむものである
と ──
「 言葉はいらない、ただ… 」
お願いです
そんなに泣かないで下さい
また会えます
必ず
でも、あまり早くには
私の元へは来ないで下さい
私の事は覚えていて欲しいです
ですが、あまり早くには
私に会いたいとは思わないで下さい
どうか、急がずに
また私に
逢いに来てください
会いたい
なんて言葉はいらないのです
ただ……
貴方の事忘れないよ
今はそれだけで十分なのです
「 突然の君の訪問 」
にゃあ〜お
足元には一匹の黒い猫
また来たの?
そう言って笑う私に君は頬を近づける
君は私が出掛けると
その旅先でいつも会う
── 私は貴方と居るのが好きなのです
黒猫は私に語りかける
───うん、私も好き
きっとこの子が私に会いに来てる訳じゃない
私がこの子に会いに行っているんだ
突然の君の訪問 と 突然の私の訪問