明太子

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3/23/2025, 2:22:43 PM

行きつけの小さな本屋
店長の気分は甘味が教えてくれる
曇ってるね
柔らかい言葉と湿った声
閑静の中で何かが輻輳する
素朴な生活に少しの嗜好品は
邪を祓い幸を招く
今日はキャラメルだった
茶色のエプロンから伸びた大きな手は
そっと扉を閉めて首筋を掻く
小さな紫陽花が描かれたマグカップ
低気圧だから、どうぞ
渡されたココアは心臓のように熱かった


#4曇り

3/21/2025, 9:59:52 AM

心臓が痛いほど波打つ
自分が誘うのとはワケが違う
動揺につけ込む口は
離したほうがいいなら離すと
優しいのか何なのか、ずる賢い提案を投げる
きっと詐欺師とか上手くやれるよ。
…ほら、手が熱くなってきた。
少しだけ離してほしいな
質問はしないで
慌てると比例して速まる鼓動に
君はまた少し口角を上げる


#3手を繋いで

3/18/2025, 12:21:08 AM

幼い頃長らく夢をみていた
医者になりたかった
病弱の自分と難病を患った親戚
動機には十分すぎたが故に現実味が消えた
藁をも縋り、雲をも掴む者
私情の塊に光を失い、目の前の計算ですら手放す者
後者だった時はどんな反応をすればいい?
諦めた挙げ句藻掻いて得た中途半端な知識ほど
要らないものはない?
叶わぬ夢
――もし戻れるのなら
虫の良い話だ
返答を求む、よろしくコピー

#2叶わぬ夢

3/16/2025, 5:05:12 PM

妹が入院した
3月に入って間もない頃だった
辺りは芽吹く季節になり
学生は新生活の準備をする
ハレの日が待っているすぐそこで
妹は入院した
病気の再発だった
1週間前風邪が長引いていることを知って
Kは嫌な予感がしたという
悪化した妹の病に夜風が吹いて
冷たい足が人を眠らせない
現在午前2時01分
花の香りと共に退院することを願うよ
ラジャー


#1花の香りと共に