「霜秋さん、おはようございます。今日も起きるの早い
ですね。」
そう言って病室のカーテンを開ける看護師さん。
「あ、おはようございます。目が覚めちゃって...。」
「早起きは三文の徳ですから。ベッド起き上がらせますか?」
「お願いします。」
半月前、私は心臓発作で倒れ、病院に救急搬送された。
医者が言うには、稀に発症する難病で、余命は3年。
今まで何となく生きてきたけど、いざ余命宣告されると
くるものがある。
余命宣告されてから3ヶ月経ったある日、足が動かなくなった。それから少しずつ、下半身が動かせなくなり。
今では、ほとんど寝たきりの生活だ。
ふと 窓から庭を見下ろすと、常緑樹が目に入った。
「朝食持ってきましたよ。...常緑樹、気になりますか?」
ご飯を持ってきてくれた看護婦さんが、そう言った。
「ありがとうございます。はい、少しだけ。」
「あの木は、ちょうど霜秋さんが入院した頃くらいに植えたもので。あと2年と半年で枯れてしまうでしょう。」
「...そうなんですか。」
あの常緑樹は、私と同じ寿命なんだ。
私よりかは短い命。 でも、これからは同じ。
一緒に生まれ、一緒に枯れていく運命。
「風が気持ちいいですね。」
「そうですね。天気もいいので、散歩でもしますか?」
「いんですか?では、あそこの常緑樹のとこに。」
「分かりました、準備しますね。」
「...近くで見ると綺麗な緑色してますね。」
「ですね、とても綺麗です。」
これから一緒に枯れていく身として挨拶を。
常緑樹さん、また来ますね。
枯れるまで、お互いがんばりましょう。
【枯葉】
朝が来た
静かに日が昇り始めて
子鳥のさえずりと共に目を開けて
朝日を浴びて、気合を入れて
今日も1日 歩いていく
お疲れ様
目を閉じれば、夜がやってくる
長いようで短い時間
おやすみと、一言添える
【今日にさよなら】
【お気に入り】
この言葉を聞いたら、皆は何を思い浮かべる?
僕は、____と出会えた公園かな。
初めて会ったのは、小学4年生の時。
僕は友達があまり居なかった。だから、外で遊ぶなんてことは、ほとんど無かった。
その日は、何となく外に行きたくて。
もしかしたら、君が僕を呼んでたのかもね笑
ある公園を通りかかった。
そのとき、猫の声がしたんだ。
「にゃあ。」って、とても弱くて、今にでも消えてしまいそうな声。
声のした方に行くと、花壇の近くに猫がいたんだ。
日向ぼっこをしていて、暖かそうだった。
「僕も日向ぼっこ、一緒にしていい?」
なんて、声をかけてみたら「にゃあ。」と返ってきた。
「ありがとう」 一言いって、隣に座る。
猫は、僕の足の上に乗ってきた。
僕は猫を、優しく撫でた。
とても暖かくて、モフモフで。
この子も、一生懸命生きて、生きて、生きてきて。
ここまでたどり着いたのかな。
「猫ちゃん、また来てもいい?」
「にゃう。」
「ありがとう、次は美味しいもの持ってくるよ」
「にゃ。」
それからは、毎日公園に通った。
「ハル」って名前も付けた。
「ハル、来たよ。」 「うにゃ。」
時間が経てば、僕は「またね。」と一言。
すると、ハルも「にゃあ。」とひと鳴き。
ハルと僕の、一時の思い出がつまってる公園。
ハルと僕の、人生の思い出の1ページの公園。
心の落ち着く場所。
僕の好きな場所。
僕のお気に入りの場所。
誰よりも可愛くなった君
誰よりも見た目を気にして
猫背を治して
リップをつけて
髪を巻いて
香水をつけて
それは
僕じゃない誰かに向けての努力
僕なら、どんな姿でも君を好いているのに
僕なら、どんな姿でも君を愛しているのに
なんて
何も努力してない僕が言えたことじゃないな
10年後の私(僕)から届いた手紙🕊✉️
________ 眠い。 ものすごく眠い。
何年もの間、起きていたかのように、体がだるい。
「今何時だ?」
ふと机の上を見ると、見たことの無い洋封筒が置いてあった。
「なんだこれ…手紙?差出人は、……オレ、?」
自分に手紙なんて、書いたこともないぞ。
便箋すら、家にないくらいだ。
「《10年前の僕へ》って…なに、誰かのイタズラか?」
今とそう変わらない、オレの字で乱雑に書かれた、10年後のオレからの手紙。
けど、なんとなく、見ないといけないような気がした。
丁寧に封をあけ、紙を取り出す。
【10年前の僕へ
10年前の僕は、どんな生き方をしてる?】
「どんな生き方?…悪の道に進まないように生きてる」
【好きな子に告白はできた?】
「……したし、付き合ったわ」
【知ってる、付き合ったね。 そして別れた。】
「なにこいつ、うざ。……オレだったわ。」
【努力は報われた?】
「報われるような努力、してない。」
【なりたい自分になれた?】
「どう、だろう…。なれてないかな、。」
【なんでそう思う?】
「弱いから。……もっと、強くなれた。」
【今の僕、強いと思う?】
「知らんわ!まぁ、強いんじゃねぇの?」
【本当は、とても弱くて、脆くて。誰かに支えてもら
ないとダメダメなんだ笑】
「…弱いままかよ。」
【それでも、ずっと僕の傍に居てくれた人が居たんだ。】
「へぇ。なに、嫌味?…いや、オレか、。」
【僕はその人からの愛を、受け取らなかった。
いや、受け取れなかった。】
「……?受け取れなかった?」
【僕が弱すぎたんだ。だから、君に後悔して欲しくなくて、手紙を書いた。】
「それは、どうも。…え、強くなれってこと?力?」
【今君にできることは、なんだろう。】
「教えてくれるんじゃないのかよ。」
【きっと、1番近くで支えてくれる人がいる。】
「もう別れたのにか?」
【君が1番、わかっているはずだ。】
「心当たりが無いと言えば嘘になるが、…まじ?」
【彼女は、いつも僕のことを気にかけてくれた。
彼女を傷つけたら、僕が許さない。】
「いや、オレ怖。」
【僕に限ってそんなことはしないだろうけどね。
じゃあ、後悔のないように、強く、優しく。
最後に。 彼女が一番好きな花を添えておく。
またね。 10年後の僕より 】
「花、?」
封筒に目をやると、少し膨らんでいた。
ふわっと、優しい香りとともに、小さく、白い花か出てきた。
「これは、確か……。」
『○○!見て、この花!小さくてとても可愛い!』
「そうだな、ミズキみたいだ。」
『…えっ、何言ってるの、もう笑』
「ほんとにそう思ったから。」
『ありがとう!笑』
「…スイートアリッサムだ。」
花言葉は、___『優美』『美しさに優る価値』
「ミズキ、…。」
「なぁに、どうしたの?」
その時、後ろから声が聞こえた。
ミズキの声だ。
「えっ、…あ、いや。なんでもない、。」
「えぇ、気になるじゃん。…あれ、その花どうしたの?」
「あぁ、えっと。手紙に入っててさ。」
「手紙?どこにもないじゃない。」
「ここにある、ぞ…あれ、?」
机の上には、さっきまであった封筒も、手紙も無くなっていた。
床に落ちてるわけでもなく、花だけが残されていた。
「どこいったんだろ、。」
「間違えて捨てちゃったんじゃないの?笑」
そう言って笑うミズキの顔は
とても可憐で美しかった。
「ミズキ。」
「なぁに?」
「これ、やるよ。お前好きだろ、この花。」
「え!覚えててくれたんだ!」
嬉しそうに笑う、ミズキの顔が、オレは好きだ。
【拝啓 10年前の僕へ
いつも傍で支えてくれる彼女を末永くよろしく。】