形のないものとは、
愛
んなわけないじゃん。
ばーか。
消えない傷がある。
心を抉ったいくつもの言葉がある。
帰る家がある。
普通の生活がある。
ないものねだりである。
取り戻せない過去がある。
後悔してももう遅い。
ズタズタになった家族の絆はもうもとには戻らない。
目の前で、幸せそうに話す父子。
うちの父親は、こんなふうには言わないのに。
……というのを母親に言ったら、また罵られるのだろうな。
もし何かが違っていたら。
こんな未来もあったんじゃないか?
2「眠る」
君からのLINEが、楽しみで仕方がないんだ。
LINEの通知音が鳴るたびにワクワクする。
どんなメッセージを送ってきてくれるのかな?って期待で胸がいっぱいになる。
君は僕のことをたぶん好きじゃないけれど、僕は君のことがだいすき。
ずっと一緒にいたいって、強く思う。
愛が強すぎるのかな?
でも、やっぱり愛おしいんだ。
可愛らしい仕草に、時々見せてくれる笑顔に、甘えん坊な性格。
全部、全部、大好きだ。
LINEの内容はたわいもない会話だけれど、それでも僕は幸せだと感じられるよ。
あぁ! 君からのLINEが来た!
今日はどんなことを送ってきてくれるんだろう!
「なんで?」
というメッセージを皮切りに、次々と言葉が送られてくる。
「なんで?」
「ちゃんと言ったじゃん」
「明日会おうって」
「ねぇ」
「本当に」
「なんで」
「なんで」
「あの時、止めておけばよかったよね」
「ごめんね」
「もうどうすればいいかわからない」
「ねぇ」
「なんで、死んじゃったの?」
あ。
どくん どくん どくん
貴女の心の音が、大好きでした。
心臓が脈打ち、ちが運ばれ、
巡り巡って、またもとに戻る。
これが生きているということか、と実感しました。
とくん とくん とくん
貴女の心の音が、大好きでした。
心臓がしゃべらなくなり、くだがきれ、
ちが行き場をうしなって、もうもとに戻らない。
これが死ぬということか、と実感しました。
貴女の心の音が、大好きでした。