「ま、まって!!!!」
目の前で閉まる扉に向かってわたしは思いっきり叫んだ。
しかし、わたしの叫びも虚しく電車の扉は完全に閉まり切り駅構内にガタンゴトンと音を響かせながら進んでいく。
「あ、あぁー終電だったのにぃ……」
その場で崩れるように座り込んだ。
スマホを見れば時刻は既に24時を回っている。
朝7時から働いて、残業が終わったのが15分前。上司の無茶振りで渡された仕事を急いで終わらせて厚底ヒールのパンプスで全力ダッシュをしたのに間に合わなかった。
「13時からきてる先輩は22時には帰ってたなぁ。なんでわたしばかり押し付けられるのよ」
明日も仕事は朝からある。今からホテル探してご飯食べてお風呂入って眠って、明日起きられるか心配だ。
取り敢えず立ち上がって駅から出た。ただぼーっと歩いて漫画喫茶かカプセルホテルか普通のホテルかを探す。最悪ラブホでもいいやっと思いながら。
わたしは今年で二十歳になる十九歳だ。高卒ですぐに働いて、でも勤めている会社はブラック企業で、年が一番下で、女で、ノーと言えない日本人だからか、めちゃくちゃ仕事を振られる。
君の今後のために
君には期待している
君ならできると思って
そんな言葉で無理矢理仕事を与えてくる上司を心の底で死ねって毒付きながら愛想笑いと共に受け取ってしまう。
「こちとら二十歳未満だぞクソ野郎!!」
人が通らないことをいいことに思いっきり叫んでしまった。
でもそれは仕方ない。
最近の平均睡眠時間は3時間。
土日はサービス残業ならぬサービス出勤。
仕事が終わってないならきなさい。これ社会の常識だから
上司に言われたクソみたいな言葉を聞いて毎日毎日目の下にクマを作りながら、苛立ちと共に反抗する気力もないまま働く。
「でも流石に家に帰れなかったのは今日が初だなぁ」
そんなことを考えていたら後ろからプーーっ!!!と猛烈な音が聞こえてきた。後ろを向けば枯葉マークのついた車がこちらに歩道側にすごいスピードで近づいてきている。クラクションを鳴らしたのは枯葉マークのついた車の一台後ろの車。
「まじか」
そんな言葉を吐いた瞬間わたしの体にスピードの乗った鉄の塊がぶつかってきた。
こんな終わり方するなんて、わたしの人生何だったんだろう?
お題「終点」