陽葵

Open App
11/20/2023, 11:05:58 AM

#宝物

「レポート3枚なんて無理だよ…」

大学で自分の宝物について書く課題が出た。
何で大学生にもなって宝物なんて…。

宝物についてかぁ、小学生以来だ。
あの頃は何て書いたかな?

「あ、あった…」
引き出しを漁ると少し破れた原稿用紙が出てきた。

「何、なに?くまのぬいぐるみ?」
何でそんなの宝物だったのかな…?

「、、、っ」
読み進める内に涙が止まらなくなった。
私、何でこんな大事な事忘れていたんだろう。

くまのぬいぐるみは今も取ってあるのに。
何でこんな事忘れていたんだろう…。
幼稚園で離れ離れになった、
あの子からのプレゼントだった。

「お母さん、このぬいぐるみってあの子から
 もらった物だよね、、、?」

「そうよ…。思い出したのね。
 あなた、作文書いた後に事故に遭って
 幼稚園の時の記憶がなくなってしまったのよ」

「え、知らなかった…」

「ごめんね…。1回だけ話した事あったけれど、
 思い出さなかったのよ」

「そっか…。いいよ、今思い出せたし…。
 課題も終わりそう…!」

「そう、良かったわ」

-私の宝物はくまのぬいぐるみと大切な思い出です-

あの頃と同じ物を、
あの頃とは少し違った思い出を振り返りながら
私はレポートを書き始めたのだった。

11/19/2023, 11:42:03 AM

#キャンドル

「半年だったけど、ありがとうね」

「ああ、、」

夏に付き合い始めた私達は今日、別れる事に決めた。
何が原因だったかな。多分お互いまだ好きなんだと
思う。それでも別れを決めたのはこの先、2人では
幸せになれないと感じたから。
仕事で海外に行く事になった彼。毎日のように
会っていたから遠距離に耐えられなかった。
それは、彼も同じだったみたい。

「仕事頑張ってね…!」

「ああ、そうだな。じゃあそろそろ行くわ」

「あ、そうだね…!今までありがとう…」

「なあ、幸せになれよ。俺が幸せにさせたかったけど」

「、、、っ。うん、あなたもね…!」

「ああ、じゃあな」

そう言って彼は遠い国へ旅立っていった。
扉が閉まった途端、涙が止まらなかった。
テーブルに置いてあったキャンドルに火を灯す。
彼からもらった物だった。
この火が消えたら前を向けるようにするから。
ううん、
このキャンドルが小さくなるまで前は向けないかも…。
暖かな光の中で私の心は冷え切っていた。

11/18/2023, 11:08:18 AM

#たくさんの想い出

「なあ、3年間楽しかったね」

「うん、そうだね」

そう同意した僕の声は情けないほど震えていたと
思う。仲の良かった友達とは離れてしまった、
不安だらけの高校生活の始まりで出会ったこいつ。
人見知りの僕に明るく声をかけてくれた。
サッカー部のこいつと、写真部の僕。
趣味も特技も全く違ったけれど、何故だか意気投合して休みの度に遊んでいた。
こいつの彼女かと思うほど、僕が3年間で撮った写真には
こいつが写っていた。

「俺、東京行くけどさ、絶対遊びに来いよ」

「うん、もちろん」

「お前と出会えて良かったよ」

「、、、っ」

涙が止まらなかった。
卒業式で泣くなんて思ってなかった。

「何だよ、一生会えないわけじゃないだろ、、、」
そういうこいつの声も震えていた。

「たくさん思い出作れて嬉しかったよ」

「ああ、これからもだろ?」
目に光を浮かべながら笑うこいつの顔は男の僕から
見ても格好いい。

「もちろん!」
これからもたくさんの思い出を作っていこう。

11/17/2023, 12:42:07 PM

#冬になったら

冬になったらクリスマス、正月、バレンタイン。
日本には色々な国の行事が一気に訪れる。
寒いから人肌が恋しいと世の男女は恋人を作りたがる。私の友達も1人は寂しいと恋人探しに忙しそう。

寒いから寂しいって何?寂しいから作る恋人って何?
友達の恋愛話に共感できず、いつしか私に恋愛話をする友達はいなくなっていった。

大学生になり、私の恋愛に関する事を知らない友達と
恋愛話をするようになった。
彼女たちもまた、寂しいから恋人が欲しいと言った。
女子大生と恋愛話はイコールで結びつけられるほど、
恋愛話で溢れていた。共感はできないけれど、曖昧に
頷きながら話を聞いていた。

恋愛話をいくつも聞いてきたけれど、
恋人が欲しいという気持ちは生まれなかった。
冬になったら、春になったら、
夏になったら、秋になったら。
私はいつになったら恋人が欲しいと思うのだろうか。
漫画やドラマ、小説のような
作り物みたいな出会いが起こればいいのに。