#たくさんの想い出
「なあ、3年間楽しかったね」
「うん、そうだね」
そう同意した僕の声は情けないほど震えていたと
思う。仲の良かった友達とは離れてしまった、
不安だらけの高校生活の始まりで出会ったこいつ。
人見知りの僕に明るく声をかけてくれた。
サッカー部のこいつと、写真部の僕。
趣味も特技も全く違ったけれど、何故だか意気投合して休みの度に遊んでいた。
こいつの彼女かと思うほど、僕が3年間で撮った写真には
こいつが写っていた。
「俺、東京行くけどさ、絶対遊びに来いよ」
「うん、もちろん」
「お前と出会えて良かったよ」
「、、、っ」
涙が止まらなかった。
卒業式で泣くなんて思ってなかった。
「何だよ、一生会えないわけじゃないだろ、、、」
そういうこいつの声も震えていた。
「たくさん思い出作れて嬉しかったよ」
「ああ、これからもだろ?」
目に光を浮かべながら笑うこいつの顔は男の僕から
見ても格好いい。
「もちろん!」
これからもたくさんの思い出を作っていこう。
#冬になったら
冬になったらクリスマス、正月、バレンタイン。
日本には色々な国の行事が一気に訪れる。
寒いから人肌が恋しいと世の男女は恋人を作りたがる。私の友達も1人は寂しいと恋人探しに忙しそう。
寒いから寂しいって何?寂しいから作る恋人って何?
友達の恋愛話に共感できず、いつしか私に恋愛話をする友達はいなくなっていった。
大学生になり、私の恋愛に関する事を知らない友達と
恋愛話をするようになった。
彼女たちもまた、寂しいから恋人が欲しいと言った。
女子大生と恋愛話はイコールで結びつけられるほど、
恋愛話で溢れていた。共感はできないけれど、曖昧に
頷きながら話を聞いていた。
恋愛話をいくつも聞いてきたけれど、
恋人が欲しいという気持ちは生まれなかった。
冬になったら、春になったら、
夏になったら、秋になったら。
私はいつになったら恋人が欲しいと思うのだろうか。
漫画やドラマ、小説のような
作り物みたいな出会いが起こればいいのに。