「自転車に乗って」
いつの間にか自動車専用道路を走っている
これ…ネットに晒されるやつだ
まさか自分がこちら側の人間だったとは…
バイト先に入ってきた女子大生
四十の僕にとって最後の恋だった
1時間前、告白してフラれた
そしてがむしゃらに自転車を走らせていたらこんな事になってる
もしこれが夕方のニュースにでもなったら彼女にバレるかもしれない
そしたら「やっぱり私の判断は間違ってなかった」と思うことだろう…間違っているのに!
自転車のミラーに情けない顔が写る
いろんな事から逃げてきた人生だった
でも今は出口に向かって進むしかない
こんなに辛いことなんだ
でもこれをやり遂げられたら男としてレベルアップしてる気がする
もう一度、告白しに行こう
僕のダンロップシューズは勢いよく回転し始めた
「つまらないことでも」
みなさんは吉川晃司と大友康平をご存じでしょうか?
いいえ、違います、彼らはロックスターではありません。
彼らはある暗殺機関に属していた殺し屋なんです。
そして私はその暗殺機関で受付嬢として働いていました。
二人の男と一人の女…そうです、吉川と大友は私を巡って争ったことがあるんです。
吉川晃司と言えばシンバルキック。
その威力は凄まじくシンバルパンチの二倍の威力があったそうです。
そして大友康平と言えば華麗なマイクスタンドパフォーマンス。
彼はあのマイクスタンドの凄まじい回転で集まってきた人間に催眠術をかけて自在に操る事が出来ました。
こんな事を言っておいてなんですが決して『大友康平 マイクスタンド』で検索しないで下さい。
もうこれ以上犠牲者を増やさないためにも…
「病室」
「悦ばれる肛門ですよ」
耳を疑った…どういう事?
見返した医師は爽やかに微笑んでいる
イボ痔を診てもらいに来ただけなのに…
この人は肛門からイボを取り除くだけじゃなく自信を植え付けようとしてくれてる?
ダメ…今、そんな優しくされたら…私
泣きじゃくる私を尻目に彼はゆっくり座薬を押し込んでくれた
「最悪」
「お前も現金をバッグに詰めろ!」
はい、出ました「お前呼び」
そう呼ばれた瞬間、現実に戻されちゃった
嫌いなんだよね。
「お前」って呼ばれるの
ボニーとクライドを気取りたかったのにさ…
私は目出し帽を脱ぎ捨て、すき家レディオが流れる店をあとにした
「誰にも言えない秘密」
日本海の荒波が育てた逞しい広背筋から生まれた力が拳へと伝わり彼女のボディに突き刺さった。
土台無理だったんじゃ、穏やかな湖で生まれた淡水人魚の彼女にいくらボクシングを叩き込んでも海水人魚に勝てるわけねぇわ。
満身創痍の彼女をそっと湖に戻す…斜めに泳いどる…もうダメかもしれん。
「じゃあの」
わしはそう呟いて広島へ帰った。